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「談春浅草の会」は継承か承継か(その3)〜そして“こはる“は小春志へ

(承前)

立川談春の今回の独演会には、“真打昇進予行演習“と副題がつけられていると書いた。真打に昇進したのは、談春の弟子、立川こはる改め小春志である。

そして、談春はこの日の高座で「継承なのか、承継なのか」と語った。この言葉は自分に対してではあるが、小春志へのはなむけでもあるように思った。

そうした思いもあったのだろうか。前半に談春が演じたのは「桑名船」だった。“鮫講釈“とも呼ぶこの噺は、私にとっては立川談志である。イリュージョンと言える、この旅の話は、落語や講談(神田伯山の持ちネタ)でなければ成立しないのではないか。師匠の芸の継承である。

小春志は、まだ「継承」などということを考える必要はない。やりたい演目に果敢にチャレンジしていけば、それがいつかは「継承」につながる。初日は「粗忽長屋」(談春の一席目は「棒鱈」)、二日目は「蒟蒻問答」。この日は、談春・小春志のトーク(師匠から最初に「真打なるか?」と言われた時の対応について、小春志が説明したが。お見事だった)に続き、「お見立て」である。

吉原の花魁、喜瀬川のもとに通ってきた田舎者の杢兵衛大尽。杢兵衛を嫌う喜瀬川は、なんとかして杢兵衛と会うことを避けようとする。間に立つのが、廓の若い衆・喜助。最初は喜瀬川は病気で会えないと言い訳するも、杢兵衛が諦めないので、ついには喜瀬川を死んだことにする。挙げ句の果てには、ありもしない墓参りにまでつきあわされることに。。。。

私の「お見立て」は古今亭志ん朝である。杢兵衛と喜助の馬鹿馬鹿しいやり取りから、墓場の場面へと、徐々にテンポが上がっていき、リズム感あふれるフィナーレ。まるで、ベートーヴェンの交響曲7番のようであった。

小春志もテンポが良い。この噺、特に最後の場面では畳み掛けるような語りでないと、話中の杢兵衛も聴衆も、我に返って冷静になってしまう。小春志はそこを上手く演じていた。そして高座に華がある。演じた後の拍手には、口演に対する賛辞、これからに向けての期待、真打昇進のお祝い、ファンの様々な想いが込められた、素敵なものだったと思う。

正式な真打披露興行、東京での最大のイベントは10月28日〜11月1日の有楽町朝日ホールである。チラシの写真をご覧いただいて分かる通り、ゲストが超豪華である。小春志への期待、談春の人徳のなせるわざだろう。(おや、伯山の名前がない〜笑)そして、予定される演目が驚くほど意欲的である。

28日 昼「らくだ」/夜「子は鎹」
29日「鼠穴」/「大工調べ」
30日「化け物使い」/「品川心中」
31日「居残り佐平次」/「ねずみ」
11月1日「明烏」/「宿屋の仇討」

まるで、落語名作全集のようなラインアップである。このネタに、師匠の談春は、そしてゲスト陣がどのような噺で盛り上げるのか、今から楽しみである。

小春志が、こうした落語と取り組み、その先に「継承」があるのか。期待して見つめていきたい


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