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暗いムードを吹きとばす〜江戸東京落語まつり2022

大手町・有楽町を会場とし、「江戸東京落語まつり2022」が開催されている。“三遊亭円楽プロデュース”と銘打たれた、落語会派を越え、上方も巻き込んだ落語フェスティバルである。円楽は同様の企画を2007年から博多で行っており、それが東京でも開催されるようになった。

3月23日から27日まで、16公演50人以上の落語家が出演する。円楽の人徳・ネットワークなかりせばできない企画だろう。残念ながら本人は病気療養中で、一日も早い復帰を祈るのみである。

私が行ったのは3月24日、よみうり大手町ホールの夜公演。「今、この人達が面白い!!」というタイトルの下、出演は桂宮治、春風亭一之輔、立川志の輔、桂雀々、桃月庵白酒、瀧川鯉昇である。

この顔づけができるのは、この会ならではだろう。そして、このメンツでどのような落語会になるのだろう。18時30分開演なので、それぞれの持ち時間は30分とはいかない。どのようなネタをかけてくるのか、楽しみだった。

トップバッターの桂宮治は、「前座ですから」と話しながら、一気に会場の温度を上げる。あっと言う間に、観客を笑う態勢にギアチェンジさせるのは流石である。入った演目は「たらちね」。新妻を迎える八五郎の様子を、これでもかと熱演し、会場は爆笑に包まれる。

続いて上がった一之輔、独特の入りで宮治ワールドから観客を引き戻し、一之輔版と言ってもよい「あくび指南」。こちらは、力を程よく抜いた話芸で爆笑を引き起こす。

そして中入り前に上がったのが志の輔、「一之輔の真打披露には呼んでもらったが、落語会でこうして並ぶのは初めてでは」と。こうした組み合わせが楽しめるのが、本企画の嬉しいところである。そしてかけたのは、新作落語「親の顔」。子供がテストで100点満点中、5点。例えば、<ミカン21個を3人に等しく分けるためにはどうすればよいでしょうか?>という問いに対し、<ジューサーにかけて分ける>。そして、学校の先生から親子そろって呼び出しがかかる。爆笑をさらうネタなのだが、単におかしいだけではなく、そこには一種の真実が潜んでいる。志の輔ならではの、奥深い噺である。

中入りで一息ついたものの、高座には上方の爆笑王、桂雀々である。師匠は桂枝雀、最初に出た宮治は枝雀の映像を見たのは落語家を目指す一つのきっかけだった。住み込み修行の思い出から、”上方落語の四天王”、松鶴三代目春團治米朝文枝(先代)を面白おかしく紹介する。そして、「隣の桜」。いつもの通りの熱演で、会場はさらに笑いの渦に。もうくたくたである。

ここで上がった桃月庵白酒。さぞかしやりづらい状況で何を話すのだろうと聞いていると、「松曳き」。ボケた殿様と、ボケた側近の田中三太夫の、ある種シュールなやり取りが連なっていく。ここまでの流れを受けての、最高のネタ選択である。談志が絶品だったが、白酒の「松曳き」も素晴らしかった。

最後に上がったのが、瀧川鯉昇。「もう少しで帰れますから」とつぶやき、空気を一旦整え、鯉昇の脱力の高座へと観客を誘導する。そして入ったのは「茶の湯」。隠居と小僧の微笑ましくもバカバカしい行動を見物してお開きとなった。

通常の落語会となると、これだけのメンツ。人情噺やいわゆる大ネタが入りそうなものだが、特にそういうこともなく、今の世相を吹っ飛ばす笑いに包んだ時間は、独演会や名人会的に企画では味わえない、なかなかない貴重な機会だった。円楽さんには、早く元気になって、落語界全体を活性化して欲しいが、まずは、“ありがとう”!


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