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旅の記憶23(その3)〜エルミタージュ美術館の聖母
無事ビザを取得して、我々夫婦と、娘2人(15歳と11歳)はサンクトブルグに到着する。入国審査は、それなりの行列だったが大きなトラブルはなかった。
タクシーは値段交渉をする必要があり、閉口したが、おおむね快適にサンクトペテルブルグの街を楽しんだ。至るところで建設・再開発が進められ、街行く人の中には、いかにもお金持ちそうな人も多く、活気が感じられた。
普段は手が届かないキャビアも許容できる値段で食べることができ、ボルシチやロシアの水餃子ペリメニなどロシア料理も楽しんだ。入ったローカルな感じのレストラン、出されたメニューはロシア語のみで、全く判読が不可能で困っていたところ、隣のテーブルの若者が説明・通訳してくれたのも、良い思い出である。
そして、ハイライトはもちろんエルミタージュ美術館である。ロマノフ王朝時代の宮殿などが美術館となっており、建物そのものも素晴らしい。コレクションは、ロシア皇帝エカチェリーナ2世のコレクションが始まりである。
エカチェリーナ2世は、ドイツからピョートル大帝の孫でロシアの皇太子、後の皇帝ピョートル3世に輿入れする。 ロシアと欧州は、親戚付き合いだったのである。
所蔵物は、ティツィアーノなどのイタリアン・ルネッサンスに始まる西洋王道絵画に加え、マティスのコレクションが素晴らしかった。とりわけ、マティスにしか描けない色彩感覚が散りばめられた「画家の家族」に感動した。
そして、レオナルド・ダ・ヴィンチの「ブノアの聖母」。この小さな絵画の素晴らしさ、崇高さに感動し、複製画を購入した。その絵は、今も我が家の玄関に飾られている。
その頃、サンクトベルグのマリインスキー劇場を本拠とする、マリインスキー・バレエが、毎夏ロンドンで公演を実施しており、私はその素晴らしさに感動していた。本来はこのバレエ団かオペラを観たかったのだが、公演がなく実現しなかった。それでも、是非ロシア・バレエを本場でと思い、エルミタージュの敷地内にある、エカチェリーナが建設した貴族の為の小劇場で、往時も想像しつつバレエを鑑賞した。
マリインスキー劇場は心残りであったが、気分良く旅程を終了した。しかし、最後に空港の税関でロシアの現実を知らされるのだった。
*ロパートキナの「瀕死の白鳥」
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