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谷川俊太郎を偲んで〜“ピーナッツ“、“マザーグース“、そして「女に」

谷川俊太郎さんがお亡くなりになりました。1931年生まれ、92歳での大往生でした。

国民的詩人と言って良いでしょう。各所に悼むコメントが掲載されています。ほとんどの方にとって、身近のどこかに、谷川さんはいたと思います。

私が最初にその名を認識したのは、チャールズ・M・シュルツの書いた「ピーナッツ」シリーズの翻訳でした。小学生の頃、スヌーピーやチャーリー・ブラウンが活躍するこのマンガ集を数冊買ってもらいました。英語のセリフに谷川さんが対訳を付していて、そのシリーズは、今も様々なエディションが発売されています。

長らく読んでいないので、試しに角川文庫から出ている“よりぬき版“、「SNOOPY COMIC SELECTION 70s」を買い、ページを開いてみました。シュルツさんの、ある種哲学的な“ピーナッツ“の世界と、谷川さんの訳の相性が良く、止まらなくなりました。

「マザーグース」もありました。草思社からは、堀内誠一さんの挿画で立派な本が出ていますが、私が持っていたのは講談社文庫版、和田誠さんが絵を描いています。マザーグース研究の第一人者である、平野敬一さんが監修していているのですが、私が大学に進学したら、英語の授業を持たれていました。

谷川さんは自分でも絵本を描かれていますが、娘たちに買ってあげた、レオ・レオニの「スイミー」「フレデリック」の翻訳が懐かしい。

詩集が数冊家にあります。なんと言っても、記憶に残っているのが「女に」。1991年にマガジンハウスから出版されました。茶色の箱に佐野洋子さんのエッチング、本はブルーの布装で、その本の姿にも惹かれて即座に購入しました。

谷川さんは1984年ごろから絵本作家・画家の佐野洋子さんと交際を始め、1990年に結婚されます。私は1985ー88年、吉祥寺で働いていたのですが、何度か谷川さんのお姿を見かけました。佐野洋子さんとも一緒だったような。

「女に」は、佐野洋子さんの挿画と共に、彼女の存在を感じざるを得ない詩集になっています。帯にも書かれている通り、生まれる前から結びついていた二人の男女の物語。パーソナルな感情が、普遍的な世界へと昇華される。素晴らしい作品だと思います。

佐野さんと谷川さんは後に離婚することになるのですが、佐野さんはすでに他界されています。装丁の平野甲賀さんももういません。(「女に」は、現在集英社から出ています)

1995年、小学館から出た「モーツアルトを聴く人」はCDが付属されていて、モーツァルトの楽曲と、谷川さんの朗読が収められています。谷川さんにはモーツァルトが似合います。(現在は他の作品が入った新編集版が出ています)

以前に記事にした、石川セリの「翼/武満徹ポップソング」には、多くの谷川俊太郎作詞作品が入っていて、どれも心に沁みました。

谷川俊太郎の詩を悼み、一篇の詩を引用します。Rest In Peace


“死“ (「女に」より)

私ハ火ニナッタ 
燃エナガラ私ハアナタヲミツメル
私ノ骨ハ白ク軽ク
アナタノ舌ノ上デ溶ケルダロウ
麻薬ノヨウニ


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