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2022年もミステリーの季節がやってきた〜ホロヴィッツ「殺しへのライン」

今年もミステリーの季節がやってきた。週刊文春始め、2022年のミステリー・ベストが発表され、書店には上位の作品が並ぶ。

昨年は、国内・海外ともベスト10作品すべて未読。今年は奥田英朗「リバー」を読んでいたので、これは入るかと思っていた。結果は、「週刊文春ミステリーベスト10(12月8日号掲載、以下「文春」)」が6位、「このミステリーがすごい!(以下、「このミス」)」は10位。ミステリーとしての評価は妥当なところ。小説としておすすめであることは既に書いた。

逢坂冬馬「同志少女よ、敵を撃て」は、「文春」「このミス」とも7位。やや低いようにも思う。

海外部門、常連のアンソニー・ホロヴィッツくらい読んでおこうと、「殺しへのライン」を買ってあったのだが、ようやく読み終えた。「文春」「このミス」とも、5連覇がかかったが、惜しくも2位という結果だった。

ミステリーになにを求めるかは、多様であるが、王道は「謎解き」とエンターテイメント性だろう。後者で重要なのは、キャラクターに関する深掘り、そして舞台設定。ミステリー・クイズのような「謎解き」のみでは、“小説“としての面白さに欠ける。そしてドラマを盛り上げるのが題材である。

アガサ・クリスティが偉大なのは、この要素をバランスよく配し描いたことであった。そして、彼女を始めとするミステリーの黄金時代を現代に甦らせているのが、アンソニー・ホロヴィッツであり、それ故に高い人気を博しているのだ。

「殺しへのライン」は、彼の“ホーソーン&ホロヴィッツ“シリーズの第4作。元刑事のダニエル・ホーソーンが探偵役、そして作者自身を投影した作家のホロヴィッツがワトソン役である。

イギリスでは、ブック・フェスティバルというのが各地で開催される。作家などを招待し、講演会などを行うお祭りであり、書籍の販促イベントである。私は行ったことないのだが、チェルトナムのそれが著名だと思う。

ホーソーンとホロヴィッツは、 イギリスとフランスの間の海峡にあるチャネル諸島の島、オルダニーで開かれるフェスティバルに招待される。イギリス王室領の小さな島である。第二次大戦時はドイツに占領された島に集まる作家や出版関係者、そして島の住民。いかにもミステリーの舞台にふさわしい孤島で起こる事件。クラシックではないか。

これ以上は書けないが、シンプルな中で「謎解き」と登場人物が絡まり合い、ホーソーンがそれを解き明かしていく。そして、このシリーズの最大の特徴は、このホーソーン自身が最大の“謎“なのである。小説は終わるが、“謎“は次作へと引き継がれる。もう、職人芸と言っても良い。

第1作が「メインテーマは殺人(原題:The Word is Murder)」、第2作は「その裁きは死(The Sentence is Death)」。Word=単語/ことば、Sentence=文章/判決ときて、本作は「The Line to Kill」。Line=行あるいはくだり/道筋。このタイトルだけでも、遊び心満載である。

そして次作は「The Twist of a Knife」。邦題はどうなるだろう、「ナイフの回転」とか。Twistには、<意外な進展>、(物語などの)<ひねり>という意味がある。さて、どんな展開になるのだろうか。

おそらく来年に翻訳版が出版され、またベスト1奪回の期待がかかるのだろう。これは楽しみである。それとも、英語版を読むかー 前作含めて未読の方、準備の時間は十分ありますよ


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