「マティス展」@東京都美術館〜色彩・デッサン・切り絵、そして礼拝堂
上野の東京都美術館で「マティス展」が開催されている。主催者HPによると、約20年ぶりの大回顧展とのことです。
アンリ・マティス、大好きだが、印象に残っているのは2002年にロンドンのテート・モダンで開催された、「マティスとピカソ展」。二人が交流を通じて刺激しあった成果が、見事に展示されていました
そして同じ頃に訪れた、サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館。以前に少しだけ触れましたが、「画家の家族」(1911年)の 素晴らしい色彩感覚、「ダンス」(1910年)、「音楽」(1910年)の原始的で力強く、画面から動きや音が湧き出るような凄さ!
今回の展覧会は、パリのポンピドゥーセンター所蔵作品を中心に、彫刻なども含めると150展ほどの作品が展示され、マティスの軌跡をたどれる回顧展となっています。
最初期の作品から、1904年の「豪奢、静寂、逸楽」、「アルジェリアの女性」(1909年)などを通じて、スタイルを変化させていくマティスの活動を見ることができます。過去や同時代の巨匠の絵を踏まえながら、マティス独自の画風を形成しようとする懸命な姿です。
マティスといえば、やはり“色彩の魔術師“であり、その特徴が出た作品を見ていると、細かな色の配置、それを際立たせるデザインが巧妙に描かれていることに気づかされます。
晩年の「ヴァンス室内画シリーズ」の中の傑作、「赤の大きな室内」(1946年)やはり素晴らしい。ヴァンスに先立つ、ニース時代の「ニースの室内、シエスタ」(1922年ごろ)も好きな作品。この辺りは、撮影可のゾーンだったので、写真も掲載しています。
こうした“回顧展“は、画家の違った側面も発見でき、オーディオ・ガイド(by 上白石萌歌)でも説明されていたデッサンなどのシンプルな作品群もよかったなぁ。
彫刻作品も多く展示され、特に1910年から30年にかけて作成された「背中」シリーズには、上述の「ダンス」などとの関連も見てとれます。
晩年体調を悪くしたマティスは、切り絵に向い、1947年の「ジャズ」(20点全て展示されています)などの新しい作品群を作り上げていきます。
そして、マティスの最後の仕事は、ヴァンス・ロザリオ礼拝堂の建築・装飾・聖職者の衣装作成といったプロジェクトとなり、関連の作品・資料などが展示されます。
展覧会の前半に、マティスの作品としては異色の「コリウールのフランス窓」(1914年)という作品が飾れています。第一次世界大戦の勃発の翌月に描かれたこの絵は、窓が真っ黒に塗られています。この黒は何も意味しているのでしょうか。黒の背後にはうっすらと窓の手すりが描かれています。
マティスの二人の息子は徴兵されます。マティス自身も志願しますが、健康問題で採用されませんでした。 「コリウールのフランス窓」と、ロザリオ礼拝堂や、そのステンドグラスが、なにかつながっているように感じたのでした
開催は8月20日まで。私は日時指定券を買って行きましたが、当日6月11日は日曜日ながら比較的空いていて、予約なしでもすぐに入れるようでした。天気が悪かったせいもあるでしょう。