落語「抜け雀」と草間彌生〜お代の代わりに絵を
落語に「抜け雀」という噺がある。宿屋に一人の男が現れる。数日間逗留し、飲み食いして、いざ出立という時。宿屋の主人が勘定を求めると、お金がないとのたまう。自分は絵師なので、「宿代の抵当(かた)に、衝立に絵を書いてやる」と、雀の絵を書く。そして、「自分が戻るまで決して売ってはならない」と言って、出ていく。
翌朝、主人が戸を開けると、衝立の中の雀が動き出し、絵を抜け出して外に飛んでいく。雀はひとしきり飛び回った後、再び衝立の中に戻りピタッとおさまる。これが、評判になり、この宿屋は見物客で大繁盛。そんな最中に、先の絵師に比べるとずっと年配の老人が宿に泊まり、絵を見ると、、、、、
ニュースを見ていたら、草間彌生の未公開作品がオークションにかかるという話題が放送されていた。その作品は、1957年、日本人医師に無料で診察してもらったお礼に、草間が医師に贈った11点である。
このニュースを見ながら、落語の「抜け雀」を連想していた。草間彌生と落語には何ら関係性が見出せないので、草間が「抜け雀」を参考にして絵を贈ったとは思えない。それでも、落語の絵師も草間も、自分の作品に対して一定の価値があるとの自負はあったはずで、その点では通じるものがあるようにも思う。
もちろん、草間が東京で個展をやった時に、寄席に足を運び、古今亭志ん生の「抜け雀」を聴いたなんていうエピソードがあったら、とても面白いのだが