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冬の噺(その1)〜冬の肴と酒「二番煎じ」

冬の噺、特にこの季節となると「芝浜」「掛け取り」などが挙がるだろう。ただ、この2題は冬というより「暮れの噺」である。冬の噺で好きなのは「二番煎じ」だ。

私が子供の頃、この季節になると「火のよぉ〜じん」の声と拍子木の音が聞こえてきた。そろそろ寝る時間である。あれは、きっと町内会の世話役の人たちが回っていたのだろう。

こうした夜廻りは江戸時代からあったが、火事が多く、その被害も甚大だった当時は、もっと重要な役割だったろう。この話に登場するのは、旦那連中で組織した自衛のための夜廻り隊だが、自治ではあるものの、それはお上の監督の下で行われており、その基地局施設、番小屋が置かれていた。

冬の寒い寒い夜、番小屋に集まった旦那衆。月番の発案で、暖も取れ楽だということで、二組に分かれて回ることにする。先番は、月番を筆頭にした一の組、ワァワァ言いながら廻る風景が、第一幕である。月番、大店の主人、謡の先生、商人の宗助、鯔背な辰。各人の演じ分け、清元や謡の素養、そして聴くものを寒い冬の夜に誘うための臨場感、落語家の力量が試される。

第二幕、一回りして番小屋に戻った一の組、密かな楽しみと酒を持参した者が数名、肴がいりようだろうと、猪鍋の材料に加え、ご丁寧にも鍋を背負って来ていた宗助。役人にバレると大問題になるであろう、番小屋での宴が始まる。私にも経験があるが、このようにコソコソと飲む酒は、普通に飲むより何故か美味い。

宴もたけなわ、突然番小屋の戸が「バン!」と鳴る。そこに登場したのは。。。。。

冬の市井の和やかな風景が実に楽しい。そうした風情の中に、名セリフが散りばめられている。落語でしか描けない世界、名作である。

私にとっての「二番煎じ」は、やはり古今亭志ん朝である。この人の上手さ、テンポの良さが際立つ演目だと思う。笑いどころも多く、誰もが楽しめる演目に仕立て上げられていて、絶品である。特に酒飲みにはたまらない。立川談志が「ひとり会」で演じた音源がある。蝶花楼馬楽から教わったとし、「私には合っていない」噺と言いつつ、口演しているのが面白い。現役では、春風亭一朝が好みだ。志ん朝のスタイルを受け継ぎつつ、笛の名手でもある、一朝師の上手さがさらに盛られている。

この噺を聴くと、猪鍋が食べたくなる。別名、ボタン鍋、味噌仕立てのつゆにささがきゴボウなどの野菜と猪の肉を入れる。合わせるのは当然日本酒である。猪鍋、最後に食べたのいつだろう、たまらず、ふるさと納税で注文した

と、数日前に書いて寝かせていた。昨日発売の週刊文春(12/30・1/6合併号)をパラパラめくると、十六ページにわたる落語特集が組まれている。その中に、平松洋子の連載「この味」が組み込まれており、タイトルが“現代版『二番煎じ』“! 

<『酒は外で飲むからうまい』これを持論とする知人がいる>と始まり、<寒さが募ってくると、毎冬聴きたくなる落語>として「二番煎じ」を紹介し、外で飲む酒がなぜうまいかにつなげている。平松洋子さんと個人的なつながりはまったくないが、なんだか少し嬉しかった



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