見出し画像

妊娠⑰|自己貯血


私がコロナに感染していた影響で「8月8日」の妊婦健診はスキップ。

次に病院に伺ったのは、目安だった34週を超えた「8月15日」だった。


この日は妊婦健診のほか、[ 自己貯血(1回目)]の日でもあった。

■自己貯血
出産前に自分の血液を保存し、大量出血に備えておくこと

国立成育医療研究センター

まず健診からスタートし、前回のMRIの結果報告。

新たな異常があるかどうかと共に、胎盤が上に動いているかどうかの最終確認となり「経腟分娩に戻れるか」が決まる。


結果は…

「当初より少し動いてはいたが、依然として子宮口は覆っている」

という判定。


これにより「9月2日に予定帝王切開での分娩」が最終確定となった。


ただ、幸いなことに「『癒着胎盤』の可能性は低い」という判定も出た。

全前置胎盤のリスクの中でも、私たち夫婦の中でもこの「癒着胎盤」は本当に不安が大きく、“子宮全摘出” だけは妻としても本当に避けたかった。

もちろん、当日の状況にも左右されるが、現時点では心配ないとのことだったので本当に良かった。


そしてもう1つ。

これまでずっと懸念されていた「体重」

なんと「1,907g」まで増加し、発育曲線内にまた戻ることができた。
(やはり、私の実家のご飯が良かったのか…)


日を追うごとに、懸念点が一つ一つ解消されていく。


私たち夫婦だけでなく、家族や医療チーム全員が、最善を尽くしていることが徐々に報われ始めている。

そして、それに応えるように、息子も懸命に大きくなろうと頑張っている。

私たちの思いが “ちゃんと息子にも届いている” と思えるほど順調だった。


そして、健診が終わり「自己貯血」のために部屋を移動。


自己貯血は、2回に渡って行われ、「 合計600ml(300ml×2)」の血液を保存する。

妻の場合「全前置胎盤」であるので、帝王切開時の大量出血がほぼ確実に起こる。

その時[ 自己血輸血(回収式)][輸血用血液製剤]の対応が基本だが、後者は感染症のリスクが0ではない。(現代では確率はかなり低いようだが)

■自己血輸血(回収式)
手術中や手術後に出血した血液を回収し、患者に戻す方法

■輸血用血液製剤
日本赤十字社が献血により得られたヒトの血液から作られ、赤血球成分製剤 赤血球製剤は血液から血漿、白血球及び血小板の大部分を取り除いたもの

日本自己血輸血・周術期輸血学会、厚生労働省、日本女子医大

そういったリスクも排除するため、可能な限り自己血輸血で、つまり “自分の血液のみ” で対応するのが望ましいが、実際それだけでは足りないケースが多い。

さらに「全前置胎盤」という状況なので、自己貯血は必ず行いたいと主治医から言われていた。


しかし、妻は「低血圧」「貧血持ち」

毎年の健康診断の採血でも横になりながらの処置で、処置後も30分ほど安静にしないと動けない。

採血は「10~15ml」程度だが、自己貯血は「300ml」
”約20~30倍” もの差があり、それも恐怖のひとつだったが、それ以上に学生時代に献血を行い、失神してしまったことがトラウマになっている。

そういった背景もあり、主治医も当初は少し悩んだようだが、やはり “出産時のリスクは一つでも減らした方が良い” とのことで、自己貯血が出来るように妊娠中期から「鉄剤」を服用したりと対策を打ってきた。

また、当日担当する「輸血部」にも事前に連携し、万全の体制で自己貯血に臨めるように準備して下さった。


そしていざ「自己貯血」の時間。

妻としても過去のトラウマがある分、直前までかなり恐怖だったようで、私にも犇々と伝わってきていた。

処置中は私は待合室で待っており、処置後の安静にするタイミング(大体20-30分後くらい)で呼ぶと言われ、私も緊張しながら待機していたが…


「もう中入って大丈夫ですよ~」

と、ものの10分も経たないうちに声がかかった。


そして中へ入り、恐る恐る妻の顔を覗くと、意外とケロッとしている(笑)

もちろん、元気!という感じではないものの、顔色は良く、看護師と女子トークを繰り広げていた。

この看護師の方が気さくな方で、そのおかげで妻も安心して自己貯血を迎えられたと言える。

その後、私もトークに混ざり30分ほど安静にし、自己貯血の1回目は終了。


2回目の自己貯血は、1週間後の「8月22日」。

「この感じなら2回目も問題なくいけそう」と、妻の不安も1つ解消して、その日は帰宅することができた。


つづく

いいなと思ったら応援しよう!