誕生まで⑪|子を持つ親の愛
緊急外来から一夜明け、妊婦健診の日。
改めて、母子ともに問題がないことが分かりひと安心。
そして相変わらず、お腹の中では息子が大暴れをしている(笑)
25週辺りから、妻のお腹に私が手を当てても、ハッキリわかるほどの胎動になってきており、毎日毎日息子に触れるのが楽しみで幸せだった。
まぁ最初は私が触ると「スンッ…」と静かになっていたが…(笑)
ただ、やはり28週を迎え、明らかに「お腹の張りの強さ」が増してきているため、以後継続して張り止め薬を服用していくことになった。
この時点で、息子の推定体重は「994g」(28週の平均は「1,130g」)。
何とかギリギリ発育曲線内で踏みとどまっている感じだった。
また、胎盤も上に動いていないということで、
「37~38週に予定帝王切開で分娩」を前提として、今後の段取りを組んでいくことになった。(日付はまだ未定)
分娩方法の最終確定は、33週頃の「MRI」の結果次第とのことだが、基本はこの流れでいくとのこと。
母体の「全前置胎盤」と、胎児の「完全大血管転位症」。
この二つのリスクをクリアできるタイミングを、産科に加え、新生児科をはじめとする医療チームとも協議した結果「37~38週」に決定したとのことだった。
37週以降は「正期産」に該当する。
しかしながら、全前置胎盤である以上、28週以降は “いつ出血してもおかしくない状況” ではあるので、前倒しになってしまう可能性は極めて高い、
それでも、その「37-38週」というゴールに向けて「1日でも長く」胎内で成長できるように、
の継続を徹底していく。
胎盤に関しては元々、これまで対応していただいた全ての産科の医師に「動かないパターン」と言われていたとはいえ、いざ30週近くなってもほぼ変化がないと “現実を突きつけられた感” が多少なりともあった。
だがそれでも、私たち夫婦の意志は強く、息子と協力して胎盤も上げられると信じていたし、良い意味で「医者の見解も覆してやる!」というモチベーションも依然として高かった。
これもやはり「子を思う親の愛」なのか。
不思議とこの頃からか、以降も続く激動の日々の中で、様々な局面に出くわしても「信じる力」というか、
「その信じるに至る、エネルギーの根源に底がなく、果てしなく湧いてくる感覚」
というのが芽生え始めていた。
妊娠した当初からずっとあったと言えばそうなのだが、「『底なし感』 に気づいた」という表現が近いかもしれない。
「無償の愛」とでも言うのか。
今こうして振り返っても、いまいち言語化するのが難しいが、
「この子のためなら、如何なることでも乗り越えられる」
という感情は、父親である私にも確かに存在していた。
そして、診察の最後に今後のスケジュールを確認し、その日は終了。
その後の経過も順調で三週間が経過し、二回目の医療チームとの面談の日を迎えた。