MUCC『空と糸』
この曲を聴く度、わたしはある光景を思い出します。
それは、子どもの頃にわたしが見た光景。
当時、我が家の近所には野良猫たちが棲みついていました。
餌をあげてもないのに、ある猫がわたしによく擦り寄ってきてました。
わたしも家庭内に居場所がなかったから、自然にその猫と仲良くなり、お互いに見つけ合っては一緒に遊びました。
ある日、わたしが小学校の帰りにその猫を探しても、猫はいつもいる場所にいませんでした。
日頃は行かない所まで探しに行ったら、わたしはその猫が道路の真ん中で死んでいるのを見つけました。
きっと車に轢かれたのでしょう。
猫の体からは内臓が飛び出ていたし、ハエもたかり始めていたので、もう命が無いことが明白でした。
わたしはしばらく立ち尽くしました。
けれど、そのままにしていたらもっと車に轢かれてしまうから、素手で猫の体を道路の端に寄せた後、周りの大人を呼びました。
不思議と怖くはありませんでした。
まだ猫の毛並みはふかふかしていて、体だって温かい気がしたのに、もう動かないし鳴いてもくれなくて、「これが死なんだ」と子ども心に思いました。
今思えば、素手で触ったりせず、先に大人を呼べば良かったのでしょうけれど、なんだか自分でやりたかったのです。
ランドセルを背負っている女の子がそんなことをしたものだから、近所の人の口からすぐ両親の耳に入り、叱られました。
叱られたことよりも、「わたしがもっと早くあの場所に来ていたら何かが変わっていたかもしれない」という悔いがいつまでも残っています。
…長文になってしまいましたが、この曲を聴く度、わたしはあの時の光景が目に浮かんで仕方がありません。
この曲の作り手が何を想ってこの曲を作ったかは分からないのですが…、猫目線の歌詞が胸に刺さります。
もしかしたら、子どもの頃のわたしと似たような気持ちを味わったことのある方は、少なからずいるのでは無いでしょうか?
あの、猫の死体を見つけた時の気持ちを。
あの、立ち尽くす気持ちを。
あの、手を伸ばさずにはいられなかった気持ちを。