観世音菩薩普門品第二十五⑧【はじめての法華経】vol.16
【はじめての法華経】は、私が法華経を少しずつ読んでいく過程を報告するコーナーです。(マガジンはこちら)
現在、『妙法蓮華経』「観世音菩薩普門品第二十五」を少しずつ読み進めており、約4割というところまできました。ちょうど、無尽意菩薩の1回目の質問と、それに対するお釈迦さまの返答が終わったところです。
これまで読んだ部分(①~⑦)の原文+書き下し文+現代語訳は下記の記事にまとめてあります。
さて、今日から読む部分は、無尽意菩薩の2回目の質問と、それに対するお釈迦さまの返答にあたります。内容としては、観世音菩薩の「三十三身」が説かれます。
「三十三身」というのは、観音さまは33もの姿に変身して衆生を救ってくださる、という教えです。
それでは、少しずつ読んでみましょう。
無尽意菩薩。白仏言。
無尽意菩薩、仏に白して言さく、
【現代語訳】
無尽意菩薩は、お釈迦さまに次のような言葉を述べた。
世尊。観世音菩薩。云何遊此娑婆世界。云何而為衆生説法。方便之力。其事云何。
世尊、観世音菩薩は云何してか此の娑婆世界に遊び、云何してか衆生の為に法を説く。方便の力、其の事云何。
【現代語訳】
「お釈迦さま、観世音菩薩さまは、一体どのようにしてこの娑婆世界を自由に動き回り、一体どのようにして衆生のために法を説くのでしょうか。そのような方便の力は、一体どのようにしてこの世に現れるのでしょうか」
※娑婆世界・・・お釈迦さまが衆生を教え導く世界のこと。「娑婆」はサンスクリット語で「堪え忍ぶ」という意味の「サハー」からきていると言われており、「娑婆」「娑婆世界」のほか、「忍土」と漢訳されることもある。
※方便・・・衆生を仏道に導くために用いられる巧みな手段。
※事・・・この世に現れる現象のこと。これに対して唯一絶対の真理のことを「理」と言い、2つあわせて「事理」と言う。
無尽意菩薩の1回目の質問とそれに対するお釈迦さまの返答の部分では、「なぜ観世音菩薩という名前がつけられているのか」「観世音菩薩の名をとなえた人はどのようにして救われるのか」ということが説かれていました。
今回から無尽意菩薩の2回目の質問に入るわけですが、ここでは、「観世音菩薩はどのようにして衆生の目の前に現れ、法を説くのか」ということをお釈迦さまにたずねているようです。
各地をまわって演説することを「遊説」と言い、故郷を出て異国の地で勉学に励むことを「遊学」と言うように、「遊」という字には「動き回る」とか「旅をする」という意味があります。
ここで、「方便」という言葉が出てきました。
「嘘も方便」という言葉があるので、なんとなく、「真実じゃないもの」という印象を持ってしまいますが、本来は「仏や菩薩が、衆生を仏道に導くために用いる教え」であり、「最終的に真実に到達させるための暫定的な手段」です。
したがって、ここで言われている「方便の力」というのは、「衆生を仏道に導くために観世音菩薩が用いる力」ということでしょう。そして、「その力は、私たち衆生の目にはどのように映るのか」ということを、無尽意菩薩は聞いているのではないかなと思います。
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今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次回もお付き合いいただければ嬉しいです。
それでは、また。