菩薩【仏教用語解説】vol.35
【仏教用語解説】のコーナーでは、さまざまな仏教用語を解説していきます。
第35回は「菩薩」です。
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みなさん、「菩薩」という言葉を聞いて、どのようなイメージが頭のなかに浮かびますか?
私の場合は、いわゆる「観音さま」(観世音菩薩)のような、慈愛に満ちた微笑みを浮かべた神々しいお方が手を差し伸べてくださっている…というようなイメージが思い浮かびます。
ほかにも、「三人寄れば文殊の知恵」ということわざで知られる「文殊師利菩薩」や、「お地蔵さん」として親しまれている「地蔵菩薩」は有名ですよね。
①菩薩=悟りを得る前のお釈迦さま
「菩薩」とは、もともと「悟りを得る前のお釈迦さま」のことを指していました。インドからスリランカや東南アジアの方に伝わった「上座部仏教」と呼ばれる仏教においては、現在でもこのように考えられているそうです。
「悟りを得る前」と言っても、「菩提樹の下で悟りを得る前」だけでなく、「お釈迦さまがシャカ族の王子さまとして生まれる前の生存」のことをも指します。つまり、前世ということです。
「ジャータカ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは簡単に言うと「お釈迦さまの前世の物語」の総称で、色々なお話が残っています。
そのなかでも有名なお話のひとつに「捨身飼虎」というものがあります。お釈迦さまが前世において「薩埵王子」という王子さまだったときのお話です。薩埵王子は、飢えた虎の親子を救うために、崖の上から身を投じて、自分の身体を虎の親子に与えました。法隆寺の「玉虫厨子」にも描かれている場面です。
ほかにも色々なお話が残っていますが、この「捨身飼虎」のような自己犠牲を中心とした行をおこなったのが「菩薩」時代のお釈迦さまだったわけです。
また、このときお釈迦さまがおこなった行のことを「菩薩行」と呼びます。これはお釈迦さまのような限られた人にしか成し得ない修行であり、上座部仏教においては、一般の修行者がおこなうことは想定されていません。
②菩薩=悟りを求めると同時に衆生を救済する人
一方、インドから中国を経由して日本に伝わった「大乗仏教」と呼ばれる仏教においては、「菩薩」とは「悟りを求めると同時に衆生を救済する人」を指します。
「菩薩」という存在を、お釈迦さまの前世に限定していないんですね。冒頭に紹介したように、日本においてさまざまな菩薩さまが知られているのはそういう理由からです。
菩薩にとって最も大事なことは、まず「菩提心」(悟りを求める心)を起こすことです。それから、自分の修行を完成して成仏すること(自分のための利益、自利)と、すべての衆生を救済すること(他に利益をもたらすこと、利他)の2つを目的として菩薩行を行うことになります。
このように仏道修行をおこなう人は、出家している・出家していないにかかわらず「菩薩」であるとされます。
サンスクリット語では「ボーディ・サットヴァ」(悟りを求める人)
「菩薩」は、サンスクリット語では「ボーディ・サットヴァ」と言います。意味は、「悟りを求める人」だそうです。
上座部仏教における「悟りを得る前のお釈迦さま」という解釈にも、大乗仏教における「悟りを求めると同時に衆生を救済する人」という解釈にも、両方ともに通じる意味なんですね。
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今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、また。