翻訳者のためのパソコン選び
こんにちは!翻訳ジャーニーです。今日はYouTubeで公開した翻訳者のためのパソコン選びの内容をテキストで紹介します。動画よりもテキストで見たいという方は多いはずです。長い動画を見る時間がなくても、ざっとスクロールするだけで内容はつかめます。最後の「まとめ」だけ見てもOKです。
翻訳未経験で新規に購入する方を念頭にお話ししています。受注できる仕事の総数を最大化するという理由で、今回はMacについては触れていません(Windowsのお話のみです)
動画では触れなかったノートパソコンと停電&UPSについても最後に追記しました。
はじめに(00:00~01:37、合計1分37秒)
まずは全体の説明です。翻訳者のパソコン選びについては、「とにかくハイスペックなパソコンが必要」という意見と「近所で売ってるパソコンを買ってくれば十分」という2つの意見があります。私はどちらも意見にも納得できる点があります。パソコンスペックはとかく、「大は小を兼ねる」ということになりがちです。
そこでこの動画では、翻訳未経験&パソコンにあまり詳しくないという方を念頭に、「最低限このくらい必要」「このくらいあると安心」「お金に余裕があればさらに……」のような目安を示してお話しします。
翻訳に特化した8つのテーマ(01:37~05:05、合計3分28秒)
まずは取り上げる8つのテーマについて、ダイジェスト的なお話をしています。1. Windows vs. Mac、2. デスクトップvs.ノート、3. ノート特有のポイント、4. グラフィック性能、5. ストレージ、6. メモリ、7. CPU、8. Windowsのエディションがテーマです。
1. WindowsにするかMacにするか(05:05~06:09、合計1分04秒)
近年、ブラウザだけで仕事が完結することが増えています。CATツールのクラウド化です。また、Macのローカルで動作するCATツールも(多くはありませんが)存在します。収録時は2021年の秋でしたが、今後3~5年くらいで、翻訳業界(実務系ローカライズ業界)におけるWindows優位の状況も大きく変わってくるというのが私の見立てです。しかし、翻訳未経験の方がなるべく多くのチャンスを手にするという観点からは、まだまだWindowsを選択しておいた方がよいと思います。
2. デスクトップにするかノートにするか(06:09~11:45、合計5分36秒)
これは、働き方の問題なので、どれが良いかを決めるのは難しいと思います。皆さんがどのように働くかをイメージして、予算を踏まえて決めてください(A~DのタイトルをクリックするとYouTubeの該当箇所に飛びます)。
A) デスクトップのみ
自宅の仕事部屋でのみ働く+外出時はスマホでメール連絡程度。デスクトップはスペックの割にノートより割安になる傾向があります。ディスプレイやキーボードは別途購入が必要ですが、好みに応じてそろえることができ、壊れてもそこだけ買い換えられます。デスクトップパソコン内部のパーツも増設や交換が(ノートに比べると)容易です。
働く場所は固定されますが、それ以外の面ではメリットの多いパターンです。予算も抑えめです。
B) デスクトップをメインに、ノートをサブに
リッチなパターン。費用はかさみますが、働きやすいでしょう。データの同期をどうするのかはしっかり検討しておくべきです(データの同期については動画でお話ししていません。リクエストがあれば何かお答えします)。
サブノートのスペックはある程度は妥協してOKです。
C) ノートパソコン単独
家の中の好きな場所+外出先でも働けるモバイルワーク向きのスタイルです。ディスプレイやキーボードが本体と一体になっている点がメリットでありデメリットです。詳しくは動画をご覧ください。スペックは推奨ラインをクリアしている必要があります。
D) ハイスペックのノートパソコンをデスクトップのように使う
1台のハイスペックノートを購入して、普段はデスクトップのように使う方法です。外出時はケーブル類を抜いて持ち出して、帰宅時には接続します。ハイスペックノートは高額ですが、シンプルな形で働けてデータ同期のシンプル(というか、同期の必要がない)というのがメリットです。スペックは推奨ラインを超えて、高めを狙っていきましょう。
3. ノートパソコンを選ぶ場合のポイント(11:45~17:10、合計5分25秒)
ノートはディスプレイとキーボードが一体になっています。メリットでもありデメリットでもあります(パーツの交換ができない or むずかしい)。ディスプレイは反射しないノングレアをオススメします。テンキーあり/なしも重要なポイントです。13インチまではテンキーなしが普通。15インチはテンキーありが多め。14インチがあり/なしの分水嶺です。テンキーがない方が、体、ホームポジション、ディスプレイが一直線になります。キーボードは同じシリーズのパソコンを触ってみて感触を確かめておいてください。
4. グラフィックの性能について(17:10~21:55、合計4分45秒)
いわゆる「美しいグラフィック」は翻訳者に必要ありません。気をつけるべきは、何台のディスプレイに出力できるか、です。仕様表を見ると書いてあるはずです。USBから変換ケーブルを使ってディスプレイに出力することもできます。多少の遅延はありますが、翻訳作業には支障がないと思います。
ワンポイント:目が疲れないよう、ディスプレイの明るさ(ブライトネス)を下げましょう。目安としては、白い紙をディスプレイの横に置いてディスプレイの白と物理的な紙が同じ明るさになるようにしてみてください。ブライトネスは結構下げることになると思いますが、目には優しいと思います。
ディスプレイの「方式」はIPSがオススメです。少し安いTNでもOK。今使っているパソコンやディスプレイの方式を調べてみてください。
5. ストレージ=記憶装置について(21:55~24:20、合計2分25秒)
メインの記憶装置には「SSD」を選んでください。HDDをメインにしてはいけません。翻訳者は辞書や翻訳メモリから必要なデータを瞬時に取得する必要があります。調べ物でブラウザのタブを大量に開きます。そのためにはHDDではパワー不足です。必ずSSDにしてください。
容量は、256GBはほしいところです。512GBあると安心できます。私は1TBのSSDを使っていますが、そこまで必要なかったなー、と思っています(ただ、私はYouTubeの動画を撮影・編集するので、一般的な翻訳者よりも容量が必要です)。
6. メモリについて(24:20~25:51、合計1分31秒)
とても重要です。サクサクと仕事をするためには一定以上のメモリを積んでおく必要があります。大は小を兼ねますが、16GB以上あるとよいでしょう。予算がなければ12GBでも妥協できます。私は32GBにしています。
7. CPUについて(25:53~31:55、合計5分58秒)
パソコンの頭脳と呼ばれるCPUです。SSDでメモリがある程度あれば、CPUはそこそこでOKです。でも、そこそこってどこそこ?というお話をしています。
CPUにはグレードがあります。Core i5とかRyzen 3とか、そういうやつです。3, 5, 7, 9 というグレードがありますが基本は5あたりです。予算が少なくてサブノートを選ぶ場合は3で妥協してもOKです。Core i7は、お金に余裕がありSSDの容量やメモリに十分なスペックを振った後に選べるなら選んでください。
CPUの「世代」は最新にこだわらなくてもOKです。普通に売っているCPUなら、だいたいは最新 or 1世代前とかですので、気にしないでください。
CPUの性能を見るサイトがいくつかあります。CPU Benchmarkというサイトを紹介しておきます。ここに型番を入れるとスコアが確認できます。お使いのパソコンに搭載されているCPUを調べて、型番を入れてみてください。だいたいの感じが分かると思います。
8. Windows Home か Pro か(31:55~35:10)
在宅で働くフリーランス翻訳者としては、HomeとProの違いは、「リモート操作をされることができるか」だと思います。Homeの場合はWindows標準の機能でリモート操作を受けることができません。標準機能でなければリモート操作をするツールは存在します。HomeからProへも有料でアップグレードできます。
家電量販店ではHomeが主流です。CTOやBTOと呼ばれるカスタマイズパソコンはProが選べることがあります。詳しくは動画で。
9. まとめ(35:10~最後)
各項目のまとめ:
仕事の量を最大化するという意味ではWindowsを選ぼう
デスクトップ vs. ノートは働き方と予算で決めよう
ノートを選ぶ場合は特有のポイントに注意しよう(ディスプレイ、テンキー、パーツの交換など)
グラフィックの美しさは不要だが、テキストを長時間見るのでノングレアにしよう(パネルでの対応も可)
ストレージはSSD一択。容量はミニマム256GBだが、可能な限り512GB以上にしよう
メモリは16GBくらいを積もう。大は小を兼ねるので予算があればどしどし追加しよう
CPUはCore i5やRyzen 5を選ぼう。メモリとSSD容量を増やした後にさらに予算に余裕があればCore i7/Ryzen 7を選んでもおk
リモート操作を標準機能でリモート操作を受けたいならProだが、サードパーティツールもありアップグレードも可能なのでProは必須ではない
購入先:
CTO/BTO(カスタマイズして購入)するなら、ノート パソコンはデル、HP、レノボあたりが有名どころでお勧めです。レノボはキーボードとトラックパッドが個人的には好みです。ただし、レノボのサイトは納期が遅れることが多いのでご注意。
デスクトップはツクモをお勧めしたいです。安くてもスペックは高め。カスタマイズも細かくできる。サイトの操作や見た目もわかりやすいと思います。
ふー!書き殴りました!
皆さんのより良いプロ翻訳者ライフのお役に立てればこれ幸いです。
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ではでは、アディオース!
追記:UPS(無停電電源装置)について
動画では触れませんでしたが、停電についても考慮しておくとよいかもしれません。ノートパソコンは停電してもバッテリーがあるのでしばらくは使えます。デスクトップは対策(後述)をしていないと、停電=電源オフとなります。いきなり電源が切れると最悪のケースではパソコンが壊れますが、だいたいは直前の作業内容が失われる程度で済みます(再び起動できる)。ノートパソコンなら停電後もバッテリーで駆動するので、その間に作業内容を保存できます。停電が起きたら、携帯電話ネットワークを確認してクライアントにトラブル発生の連絡を入れておいた方がよいと思います(現状、見通しなどを伝える)。スマホ経由でパソコンからデータを送れる場合はその時点のデータを仮に納品してもよいでしょう。
停電は、台風、大雪、落雷、大きな地震などが原因でおきます。一瞬だけ電気が途切れる場合、数十秒くらい停電が続く場合、そして復旧までかなりかかる場合があります。昔ほどではありませんが、2020年代になっても十分に起こりうるトラブルです。
デスクトップで作業をする場合は、UPS(無停電電源装置)の導入を検討してもよいでしょう。そこまで高額ではありませんが、やや贅沢な設備だと思います。最初からすべての機材を揃えると大変なので、しばらく仕事をしてからでもよいと私は思います。