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未経験の私が翻訳の仕事を得るまで(その後)

前回からの続き、ではありますが、今回は社内翻訳者になってからの話です。

3年強の紆余曲折を経て、ようやく派遣社員として社内翻訳の仕事を開始。勤続1年半を過ぎたころに正社員の打診を受けます。

派遣社員から正社員へ

コンサル会社では最初の1年ほどは苦労しました。とにかく一般常識がないため、意図せずに人とハズれたことをしてしまう。社会人経験数周回遅れの焦りがアダになることもしばしば。会ったこともないお客様に馴れ馴れしい文章のメールを送ってしまい怒られたこともありました。自分では良かれと思ってやっているのですけれど、とんだ勘違いなのですね。あの頃は本当に、何も分かっていませんでした…。

「ベンチマーク」のベの字も知らなかった私が金融英語の基礎を学んだのはこの頃です。日経新聞の購読を開始したり、勉強のために投資信託を買ったりもしました。

日経新聞の書評がきっかけで多読を始め、多読で読んだ本がきっかけで耳読を始めるなど、なかなかインプットの多い時期でした。金融英語はほぼ独学と実務で学んだのですが、もっと早くに金融翻訳の通信講座を受けておけばよかったと後悔しています。

翻訳者は駆け出しの頃のインプット量が後々のキャリア形成に効いてくるので、若くて体力のあるうちに踏ん張っておいて損はないと思います。

というかこれ、どの仕事でも同じかも知れませんね。

で、少しずつ仕事を覚えそれなりに自分のポジションも確立されてきた入社後1年半あたりで、正社員にならないかという打診を受けました。

リーマン・ショック前のこの頃は、派遣社員の私ですら社員旅行で沖縄に連れて行ってもらえるぐらい会社の羽振りもよく、正社員を採用する余裕も十分にあったのです。

なのに当時の私は、近い将来にアメリカに戻る(と自分では確信していた)計画があったので、生意気にも契約更新のたびに打診を断っていたのです。自殺行為というか身の程知らずというか、我ながら呆れます。幸か不幸か、すったもんだあって結局アメリカ行きは頓挫してしまい、入社2年目にようやく正社員になることを決めました。

長い停滞期にかかってきた、1本の電話

正社員になってからは、翻訳と並行してそれ以外の業務もこなすようになりました。そして勤続5年あたりから、翻訳以外の業務の比重が徐々に増えていきます。

不満はありながらも、仕事と割り切って頼まれたことを淡々とこなしていきました。おかげで、大規模なセミナーのアレンジを担当した時には社内で賞をいただきました。とはいえこれ、翻訳とは全く関係のない仕事。本業以外のところで褒められるというのは、なかなか複雑な心境でした。

このような感じで、毎日を消化試合のようにやり過ごしていた時期が続きました。何かが違うと思いながらも気持ちを抑えているうちに、頭痛にも悩まされるように。それも、決まって月曜日に発症するのです。

次第に、「このままでいいのだろうか病」を患います。とはいえ、職場の人間関係はすこぶる良好で環境も悪くないため、自分では次の行動を起こす勇気がない。よく言えば、「足るを知る」状態とも言えるかもしれません。これで十分じゃないか、という思いと、いやいや別の道があるのではないか、という焦りのせめぎあいが続きました。

でもなんとなく、勤続10年を超えたあたりで、『あと数年で変化が起きるだろうな』という根拠のない勘のようなものはありました。

そんなある日、私宛に1本の電話がかかってきます。

突然の電話の主は…

当時の職場では素性のわからない人からの電話は原則取り次がないことになっていたのですが、この電話に出た同僚がその日はたまたま、「〇〇という人から電話です」と私につないでくれました。

この、同僚がたまたま取り次いでくれた電話が、私の新たな転機となったのです。

電話の主が社名を言った瞬間にピンときました。

「これがヘッドハンターというやつか!」

と。

電話口で「あなたにご紹介したい求人がある」と言われ、最初は半信半疑だったのですが、変化を求めていたタイミングだったこともあり、冷やかし半分で話だけでも聞いてみようと思い、電話主に会うことにしました。

数日後にオフィス近くの喫茶店でこのヘッドハンターと会いました。話してみて怪しいスジの人ではないことがわかったので、履歴書を送り仕事を紹介してもらうことにしました。

最初に紹介された2件はいずれも業務内容に翻訳が含まれていなかったので、すぐにお断りしました。自分が納得のいく案件を紹介してもらえるまで時間がかかるのかもと思いきや、3件目で早速社内翻訳者の求人を紹介されました。

企業名を見てびっくり、仕事つながりで面識があり、食事も何度かご一緒したことのあるFさんが勤めている金融機関でした。これは何かのご縁だ、Fさんが勤めている会社なら絶対間違いないはずと思い、話を進めてもらいました。

あれよあれよという間に決まっていく

それからは展開が速かった。予想通りFさんとも面接をしました。お互いに面識があり、私自身がコンサル会社で10年以上働いてきた経歴も手伝って、それなりに信用されていたためか、面接というよりは仕事内容の確認という感じでした。Fさんの上司(つまり私の上司となる)Gさんのほか、海外メンバーとの英語面接もありました。

翻訳スキルのテストやら、適正審査やら、リファレンスチェック(外資はこれが厳しい)やらを経て、約2カ月半で採用が決まりました。

11年近く勤めたコンサル会社を辞める時はさすがに寂しかったです。ただ、それよりも転職先で翻訳に専念できる嬉しさが勝っていたので、全く未練はなかったです。

それにしてもヘッドハンターって一体どこで情報を得ているのでしょうか…。担当者に直接聞いてみたのですが、もちろん答えてもらえませんでした。

そして現在に至る

で、ここからは早送り。

今の職場に移ってから勤続8年を超えました。入社当初一緒に働いていたチームのメンバーは、私以外全員いなくなってしまいました。変化の波に揉まれながらも、なんとかここまで来ることができたのは、翻訳という自分の仕事の軸をブラさずにやってきたからだと思っています。

ただ、どうも私のキャリアは10年前後の周期で変化があるようなので、もしかするとここ数年以内に再びなんらかの転機がありそうな予感がしています。

単なる勘なので外れるかもしれないのですけれど。

現職のことはいつか、もっと詳しく書きたいと思っています。いろいろな意味ですごい人がたくさんいるので…。

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