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#26 Adobe Creative Cloudエバンジェリスト・仲尾 毅「伝道師はロックを奏でる」(2020.11.6&13)

今回は盛り上がりすぎて3回放送となった回をご紹介。以前アドビ関係者には一度会議にご出席いただきましたが、いよいよグル(=導師)の登場です。あ、「アドビって?」という質問に関しては、以下の記事をご参照ください。

ということで、本日の会議相手は「アドビクリエイティブクラウド・エバンジェリスト」の仲尾 毅さんです! いろいろわからないこと多いと思うけど、まずは紹介します!

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なんだかいきなり「シェケナベイベー」感あふれる風貌。部屋の後ろにはギターもチラ見。そもそも「アドビクリエイティブクラウド」が何かというと、クリエイターの人がよく使う「フォトショップ」や「イラストレーター」「インデザイン」「XD」といったソフトがぜーんぶまとめてパックで使えるクラウドサービスのこと。で、仲尾さんはそのサービスのエバンジェリスト、つまり伝道師なんですよね?

僕は2012年6月にアドビに入社したんですけど、クリエイティブクラウドは2012年5月に提供開始。当時、アドビさんは「クリエイティブクラウド伝道師」を探しておられたんです。もう発売される時期だったのに、まだ面接をやってたっていう

そもそも仲尾さんって何をやってた人なんですか?

僕はいくつかのIT会社を渡り歩いて、ずっと製品に紐づいたマーケティングをやってました。その中でアップルやマイクロソフトの社内に「エバンジェリスト」という職種があることを知って。で、アドビという会社がエバンジェストを探してると聞いて、面白そうだと思って手を挙げたんです。僕が入った後、アメリカ本社ではエバンジェリスト6~7人を集めて部署ができたんですけど、そこに日本人はいなくて、僕はアドビ日本法人の人間なんで日本専任というか。そういう意味で僕は唯一の日本人エバンジェリストです

世界でただひとりのアドビ日本人エバンジェリスト。なんかスゴイのはわかるけど、でもエバンジェリストって何? ただカッコよく言ってるだけ?

みなさんご存知の通り、伝道って宗教用語ですよね。ただ、コンピュータ業界ではエバンジェリストという役職の人間は珍しくなくて。アップルもマイクロソフトもどちらも看板商品はコンピュータですけど、パソコンが世の中に出てきた70~80年代、当時はコンピュータは何億円もするもので、両社はそれを個人のものにするというロック魂で低価格のパソコンを作ったんです。でもパソコンはソフトがないとただの箱なので、このパソコンで動くソフトを作ってもらうため、アップルではガイ・カワサキという男がマックを背中に背負ってアメリカ中を旅したんです。「こんなコンピュータを作ったのでソフト作ってよ」ってお願いする作業をずっと続けてて、そのときガイ・カワサキは自分の名刺に「エバンジェリスト」と書いたんです

おお、なんか壮大で夢のある話になってきた! パーソナルコンピュータ創世記、それを広めるのは「普及」ではなく「伝道」だった、と。

コンピュータにはそういう宗教的な要素があるんでしょうね。エバンジェリストは新しい宗教が出たとき、信じる人を増やす活動をする人だけど、それを新しいテクノロジーに転嫁して。ほとんどのIT企業にはこの伝道師という仕事があると思いますね

まずはエバンジェリストの役割がわかったところで、いったん休憩。仲尾さんのチャーミングな御姿でも拝見しましょう。カモンベイビ~!的な。

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ここからエバンジェリトの本領発揮。まずアドビクリエイティブクラウドが革命的である理由、教えてもらえます?

このクリエイティブクラウドができる前って、たとえば絵を描く方が動画の編集をするなんて考えられなかったんです。でもメディアが多様化してきた今、特に2000年代以降はウェブ上で動画が流れるようになり、クリエイターもいろんなメディアに対応しなきゃいけなくなった。でもこれまでは新しく動画ソフトを買おうとすると20万円とか高額で、なかなか手が出せなくて。これがクリエイティブクラウドになると、いわゆるサブスク――2012年の頃はサブスクリプションって誰も理解してくれたなかった――になったことで一定料金ですべてのツールが使い放題になったんです

つまりサブスクの手法を導入することで、新たな表現に挑戦しやすくなった、と。

このシステムの趣旨は、各ソフトをオーバーラップさせることで、メディアの垣根を越えてクリエイティブの限界を取っ払おうということ。ツール自体は大きく変わらないけど、ツール同士の連携が自由になった。さらにHD⇒4K⇒8Kみたいにどんどん変わっていくプラットフォームにも追加コストなく対応できるし、アドビとしても新しい機能が追加されたら、すぐ更新できる。アドビとしては、こうした新しいツールへの接し方を伝道しなければいけないと思ったし、僕はそれって面白そうだと思ったんです

普通こうした新製品の機能を伝えるのは「プロモーション」かもしれないが、これを「伝道」と呼ぶのは、やはりその裏に単なるビジネスではない哲学があるからでしょう。そのアドビのスピリットを指すのが「Creativity for All」という言葉。すべての人に創作を!

これまでアドビのお客様はいわゆるプロの方だったんです。そういう方に2~3年おきに20万程度のソフトを買っていただいて商売していた。でも3年程前、アドビは「Creativity for All」ということを宣言したんです。プロ専用ではなく、「すべての人のクリエイティブのチカラ」と業務の定義のリミットを外した。クリエイティブが好きな人、クリエイティブに興味のある人なら、たとえその人がプロでなくても、その人に対するクリエイティビティを提供する会社であることに変わったんです

こういう部分を見ていくと、改めてコンピュータの世界が LOVE や PEACE や FREEDOM を掲げた70年代ロックの世界と重なってきませんか? すべての人にクリエイティブのチカラを。仲尾さん、ただのロックおやじじゃないんだって!

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コンピュータって70~80年代にロックを聴いてたスティーブ・ジョブズやビル・ゲイツがはじめたカルチャーだから、ロックに通じるものがあると思ってて。ロックってこれまでの凝り固まってるやり方をブッ壊すところがあるじゃないですか? コンピュータもITと呼ばれるようになってビジネスライクな方向に向かってますけど、もともとはロックなものだし、僕はいまだにそういう見方をしてます

カウンターカルチャーとしてのコンピュータ。ちなみに仲尾さん、高校時代は「ビートルズは軟弱だからストーンズ!」派だったとか。

小学校の時にKISSが武道館でコンサートをやって、それをNHKの『ヤングミュージクショー』って番組で放送したんです。そのときうちにUマチックっていうVHSの前のビデオがあって、父から「触っちゃイカン」って言われてたのに僕はそれで録画してしまって(笑)。学校から帰ってきたらカミナリが落ちましたけど、そこから親が寝た後、毎日3~4回その映像をこっそり観てました

あははははは。ロック小僧の魂、百まで。よっしゃ、KISS観ましょ!!

さらにアドビという会社のカウンターカルチャーなオモシロ話として、以下のようなのがあるんだとか。

最近はアドビのツールの中に、SIRIやALEXAみたいなAIを盛り込んでて。その名前が「アドビ・センセイ」なんです(笑)。昔『ベストキッド』という映画があって、そこでアメリカ人の頭の中に「SENSEI」という言葉が刷り込まれたらしく

ネタ元はジャッキー・チェン!? 『ベストキッド』ってコレな。

AIも台頭し、どんどん変わっていくクリエイティブを巡る環境。伝道師、未来のクリエイティブはどこへ行くんですか?

AIを「アドビ・センセイ」と呼びはじめた頃から、「アドビのツールを使っていれば将来的にプロのクリエイターは不要になるのでは?」という声をたくさんもらいました。でもパターンを真似て作ることはできるけど、発想・創造といった作業はAIにはできない。アドビはAIを使うことで、なるべくクリエイターが発想や創造に時間を割けるようにしようってことなんです。「アドビ・センセイ」は仕事を取るのではなく、仕事を拡げてもらうためのものなんです

では最後に、伝道師が望む未来とは?

今は誰でもクリエイティブなことができるようになったと言いながら、誰もがやってるわけではないわけで、まだ道半ばというところ。ただ、本当にうちの子供でも、隣に住んでるヤマダさんでも、どなたでもクリエイティブを発揮できて、発信できる時代が目前に迫ってます。なので引き続きそういう方々のためのツールを作ったりサポートをしていきたいと思います

夢を見ること、理想を追いかけること。それがクリエイティブの基本なら、アドビはやっぱりクリエイティブ。仲尾さんは毎週YouTubeでアドビクリエイティブクラウドの使い方を講義する「CC道場」開催中。ツイッターも #CCDojo  でチェックしてみてください。

しかし今回は、仲尾さんフォトジェニックすぎということに付きますね。こういう人が伝道師って、それ、すごくいいと思います!

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2020.11.2 on-line

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