情報収集が大事
いつもお茶に誘っていた社長
思い出話です。卸業時代に不思議に思っていた社長の行動です。
大阪だと心斎橋駅から長堀橋駅までの通りには宝飾業の街になります。
ボクが勤めていた所も地下鉄堺筋線の長堀橋徒歩5分の場所にありました。
簡単な仕入先やお得意さんなどもほとんどこの場所にあり、社長は朝落ち着いたら散歩に出かけます。ボクはカバンを持ちながら後ろについて歩くだけです。
そうすると当時は色々な地方へ出かけていく仲間の業者や、地方から来る仕入れ業さんと会う事がありました。
遊びで喋っている訳ではない
事務所の下にある喫茶店に30年以上通っていて、誰かを見つけるとすぐにお茶に誘うのです。業者さんも地方へ展示会に出かける以外は時間があるので喫茶店へ。
何を話すかと言うと仲間の業者さんの場合はだいたい世間話から始まって何が売れているか、どこの業者と繋がっているか、そして展示会などに行った時にどういった業者や人間が出ていたか。という事です。
仕入れ業者さんの場合も、同じような話とどういった商品を扱っているかという事です。
ここで大事なのは、話の中心は業者の詳細や景気のお話
実は宝飾業の世界はとても狭く、どこかで誰かが繋がっています。友達の友達やその先まで知っているといっても大丈夫なくらい狭いのです。
社長はこの世界で40年近く過ごしており、大阪の支店でも支店長をしていた訳で、生き字引と言われたくらいでした。
その中で誰がどこの業者と取引していたが、どういった商品が好きなのか、そしてどんな性格なのかなどプロファイリングのようなお話をしていました。
特に色々な業者の財務状況なども把握していて、今は支払いが遅れているとか会社が傾いていてかなり危ないという事などよく知っていました。
ある日の事
うちの事務所にある業者さんが遊びに来ました。あまり来る事はないのですが、普通にお茶の出前を取って色々な話をしていました。展示会に行ったりしているので、当然うちの商品も見せたりどういった商品が売れるのかなど一通り話して、また使わせてよ。
と言われますが、社長は予定のない展示会の件を持ち出して、その時期は商品が大量に出ていくから難しいと言いながら話は終わり先方は帰っていきました。
情報を制した者が勝つ
予定のない展示会の話を持ち出して珍しく渋ってるなと思っていたら、先方が帰ったあとに、ボクを喫茶店へ連れていき言いました。
「あのな、あいつ引っかかってるんだよ。」
どういう事かと聞くと、先程の業者の売り先が倒産して資金繰りに困っている。だから、どこからでも商品を借りて質にでも売り払って逃げようとしている情報が先に入っていたという事を話してくれました。
どこからそんな話を聞いたんですか?と聞くと「どこどこの誰だよ。」と。
そういえば、この前会って話していたなと思い出しました。ほぼ関係ない遠い親戚の話くらいにしか聞いていなかったボクはビックリすると同時に、急に背筋が凍る思いでした。
もし自分がそういった立場なら普通に商品を貸していたと思います。
タイトル通り「情報を制した者が勝つ」という言葉を実感しました。普段の何気ない会話であっても情報として整理し、いざという時にどういった行動に出るのか。
それが出来る者と出来ない者の違いを見たのです。恐らく先方は他の業者の所へ行きあわよくば商品を引っ張り売り逃げをしているのかも知れません。
小さな会社は吹けば飛ぶ事が当たり前なのですが、情報を制し咄嗟の判断で切り抜けないといけないのです。
今思い出しても背中に汗が流れるお話ですね(^^;)