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【ココロコラム】他人への効果的なアドバイスのコツとは

六月病の時期ですから、いろいろ悩んでおられる方も多いかもしれません。
一方で、悩んでいる人から、相談される人も多いでしょう。人の悩みをうまく聞くというのは、なかなか難しいものです。そこで今回は、他人へのアドバイスのコツについてお話します。

他人の相談へのアドバイスは、とにかく自分の意見が前面に出てしまいがちです。「あなたの気持ちはわかるけど、私はこう思う」という趣旨のことを言う人が多いかと思います。

もちろん、おおまかにはそれでいいのですが、この言い方だと、どうしても「あなたの気持ち」は前置きで、結局は最後にきている「私はこう思う」のほうが言いたいだけか、という不満感を相手に与えることがあります。アドバイスの際には、自分の言いたいことを言う前に、伝えられた悩みを十分に聞いていますよ、というメッセージを相手に伝えることを考えるのが効果的です。

例えば「仕事がつまらなくてまったくやる気がしない」という相談を受けたとしましょう。まずは、十分に相手の話を聞いているということを、相手に知らせる必要があります。そのためには、相手の言葉を、こちらでもくり返すことです。ただくり返すのではなく、ついでにやわらげるようにしましょう。

たとえば「今はまだ、仕事にやりがいを感じないことがけっこうあるみたいですね」などと返します。ポイントは「今はまだ」と未来に希望のある言い方をすること、「まったくやる気がしない」という相手の極端な言い方を、「仕事にやりがいを感じないことがけっこうあるみたいですね」などと極端でなくすことです。

そのあと、アドバイスに移るわけですが、一般的に、相談は整理しきれていない問題を含んでいます。相談する人は、問題の不明確さに葛藤を感じて悩んでいる側面があります。そこで、アドバイスする側としては、相談に含まれている問題を、何かしらの目標に置き換えてあげると、問題がわかりやすくなります。

先の相談なら「仕事が面白くなるといいよね。どうすればそうなれるかな?」というのが、模範解答ではないにせよ、一つ考えられる答えになります。仕事がつまらないという問題を、では面白くするには何ができるのかという目標に変えたわけです。

もう一つ大切なのは、なにをアドバイスするにしても、相談している人が今までしてきた努力や、内的な能力、知恵、才能などを十分に認める言葉、心理用語でいえば【プラスのストローク】を必ず添えることです。「前の仕事も面白くないって言っていたけど、なんとかこなしたじゃない」とか「厳しい中よくやってるよね」「あなたは能力あるし、大丈夫だよ」など、何かしら【プラスのストローク】を話してから、自分なりのアドバイスに移る。そうすることで、相手は失われている自信やプライドを回復するのです。

逆に、相談したのに「それじゃダメだよ」「そこに問題がある」などと【マイナスのストローク】で対応するのは、たとえそれが正しくても、あまり賢明なこととはいえません。相談する方も自分のよくない点をうすうす分かっているものです。それを面と向かって指摘されると、かえって傷ついてしまうことがあります。

これでは、なんのためにアドバイスしたのかわかりません。相手の欠点やマイナスなところをズバリというのは、テレビなどで見ている分には痛快でしょうが、言われた方はイヤな気分になることも多いものです。一般人は、よほど重要なアドバイスのときを除けば、避けた方がいいと思います。

人の話の聞き方と、アドバイスのしかた。身につけておくと、他人に対して使うだけでなく、自分の悩みへの方向性も見えてくるかもしれませんよ。

(精神科医・西村鋭介)

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