【ココロコラム】目標を削り、すぐ終わる小さな目標をたくさん考えてみる
誰でも「もっと自分にやる気があれば・・」と思ったことがあるでしょう。仕事や勉強などわかりやすいことはもちろん、日常生活でも甘いものを控えようと思ったのに、ついつい目の前のお菓子に手が出てしまうなど、こういう思いをすることはよくあります。
「やる気」や「精神力」は、もちろん本人の意志力も関係あるでしょうが、技術で何とかなる面もけっこうあります。今回はいくつか、意志力を鍛える技術をお話します。
目標が現実からかけ離れていると、ただの空想になってしまいます。意志力や実行力のある人は、ほぼ例外なく、現実的な目標を立てています。目標を達成できない人ほど「1ヶ月で10キロ痩せる」というような、ほとんど無理な目標を最初に設定します。これは、心の奥底で最初から失敗したときを想定しているからです。失敗したときでも「やっぱり思ったとおりだった」ということになり、自分の精神に都合がいいというわけです。
このパターンでは、いつまでたっても無理な目標を立てて挫折することの繰り返しです。そこで、技術を登場させます。目標を、最初に思ったものの半分とか3分の1に強制的に削ってしまいます。先の目標なら「1ヶ月に3キロ痩せる」ということになります、少し現実的になってきたと思えませんか。目標をわざと小さくしてみるのは、実行力を上げるのに大いに役立つ技術です。
もう一つの技術です。外から見ていて、よくあんなに根性が続くなあという人がいます。そういう人は超人的な精神力を持っているのではなく、やる気を出す回数が多いのです。やる気の大きさではなく、回数というところに注目してください。
これは時間を無駄に使っていることがらについて考えるとわかりやすくなります。見たくもないテレビをいつのまにかつけていたり、電車に乗ると手が勝手に動いて携帯をいじったりしていることがよくあると思います。毎回、強烈にテレビをみたいと思っているわけでもないのに、いつのまにか行動しているわけです。これは、なんとなく始めた回数を積み重ねて、いつのまにか習慣になったからです。
この原理は、生産的な方面にも応用できます。いちいち大決心をして物事に取り組むのではなく、ちょっと片手間にできる簡単なことの回数を稼ぐのが、意志力をつけていくコツです。ダイエットでいえば、一日断食するなどではなく、昼食に野菜を一品つける。オフィスに戻るときは少し歩いてみるなど、細かいことを少しずつ積み重ねていく。すると、知らないうちに成果が上がっているものです。
できない人ほど、細かいことをバカにする傾向があります。一気にやるからいいやと考えて、行動が遅くなってしまいがちです。実際には細かいことほど、簡単に実行でき、満足感を得ることができます。満足感を得れば、それだけ目標に向かうモチベーションが上がるのです。
注意したいのは、早く終わることなら、やりたくもないけど、すぐ終わるので始めてしまうか、というような心理メカニズムが働くことです。部屋の大掃除をするのは難しくても、机の上の書類を二、三片付けるだけなら、何かの片手間にすぐやれます。細かい目標は、スタートするにあたり意志力をほとんど使わず、生産的な行動を行いやすくしてくれるのです。
細かい時間にやれることをたくさんストックする。これは意志力をアップする上での重要な技術です。目安は長くて15分ぐらいで終わることでしょうか。この程度の時間なら、ぼーっとネットをみたり、何も考えずに無駄に過ごしている時間でできるからです。
目標を削る。すぐ終わる小さな目標をたくさん考えてみる。この二つを知っておくと、かなり物事の実行力が上がるはずです。
(精神科医・西村鋭介)