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『親の手をさわったことはありますか』を読んで【介護録】

親の手をさわったことはありますか

このタイトルで始まる【ひろみ/のんびり日々のこと】さんの記事を読んで、思わずドキッとした。

親の手…さわったことあったっけ…?と自分自身に問うてみる。答えは、介護をするまで、父の手を触った記憶がなかった。(ここでは母親の話は割愛します😅)

令和のこの時代ならともかく、昭和生まれなら子育ては母親の仕事という認識が少なくない。だから多くの人は、母親に比べて父親との肌のふれあいというのは少ないのかもしれない。

わたしの場合はどうだろう?
例に漏れず、子育ては母親の仕事という家庭だったと思う。いや、それ以前に両親が不仲で、幼少期の父親の思い出というのは良いものはなかった。例えば手を繋いで出掛ける、なんて思い出を引っ張り出そうとしても、わたしの引き出しからは出てこなかった。

だから、というわけではないけれど介護が始まってからも、父親の手に触れるには少し壁があった。

近いのに遠い人。父とはずっとそんな距離感だった。

父と娘による突然の介護生活が始まったのは、ほんの4カ月ほど前。手がカサカサだと言うので、父のために馬油を買ってきたけれど、その日は瓶のふたを開けて手渡すだけだった。

3か月前には、父はうまく指が使えなくなり、もどかしさから馬油を塗るのを手伝うようになった。どこか遠慮がちに触れる。始めのうちはどこか遠慮がちに。

父親の手に初めて触れて、
こんなに暖かいんだな、と思ったり
こんなに指が細かったんだ…と思ったり。

時には『手が冷たいな』なんて父が気遣ってくれることもあった。

父の手に馬油を塗るという習慣ができあがって少し経った頃、手を握ってから帰るというルーティーンができあがった。時にはハイタッチでお別れすることもあった。その頃のわたしと父は、今までの人生の中で一番近い存在になっていたと思う。

そして、介護生活が始まって2カ月ほど…つまり亡くなる数日前は力が弱くなって、手を握っても握り返してはこなかった。

──親の手をさわったことがありますか

親の手を触ること。それは、健康を知るバロメーターであり、会話が生まれるきっかけであり、わだかまりが解ける糸口にもなりえる。

父を見送った今となっては、親孝行の良き思い出だ。

編集後記:今回の記事を書くにあたり、【ひろみ/のんびり日々のこと】さんに相談したところ、快くOKしてくださいました。こうやって誰かの記事が創作のヒントになるのは面白いですね。ひろみさん、この場を借りて改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。父との日々を思い出すきっかけになりました。

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