アイスの残り


部屋の奥まで夕日が射しこんで
あぁ、もう冬なんだなぁと感じる。

ずっと陽が入るものだから
部屋は温かい。

買い物に行く予定もなく
暖かな夕暮れを向かえたある日、
父が『アイスの残りは?』と言い出した。

アイスを控える、と宣言した翌日のことだった。

アイスを控えていれば減っているはずもない。

なぜ冷凍庫の中のアイスの在庫を問うのか。

まさか…
やっぱりね…と
入り交じる感情で冷凍庫を開ける。

──明らかに減っている。

とはいえ、
あずきバーもミルク金時も
雪見だいふくもある。

アイスまんじゅうだってある。

しかし残りを気にするあたり、どうやら買ってきてほしそうだ。

今日は買い物に行く予定はないけど?と声をかける。

無言、のち

『ちょっと見てきてよ』


この2ヶ月、ずっとベッドの上にいる父は
外の寒さを知らない。

季節は冬。外は寒いのだ。

冬の夕暮れ、ポケットに手を突っ込んで
アイスを買いに行った。



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