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限界突破、家主を失ったトイレ【ゴミ屋敷からのSOS】#8

 

もう限界だった。

・・・

トイレに行く度にコンビニや近くの飲食店に足を運ぶ。お金もかかるし、労力もかかる。意を決して、開かずのトイレの扉を開けてみることにした。


──無理。



とっさに、そう悟った。スラム街の公衆便所。もはや、そう呼ぶのに相応しいほどにまで実家のトイレは朽ち果ててしまった。

かつて、わたしの実家のトイレは最新式のウォシュレットが設置され、同級生の間でも羨望の的だった。「○○ちゃんちはトイレにシャワーが付いているんだよー」と無邪気に話す、友人Rちゃんの顔が思い出される。

家主を失った実家のトイレ。栄華を極めた歴史は、遠い彼方へ行ってしまった。今日のところは思い出はポケットにしまい込み、どうやってこのトイレを復活させるか考えた。

──考えた結果。
わたしは1人でゴミ屋敷を片づけるのをあきらめることにした。


それで、まず候補に挙がったのが、ハウスクリーニングへの依頼。見積もりをお願いすると、家まるごとでも数万円で収まるという。もちろん、トイレのクリーニングも込みで。

──これでトイレが使える!

そう思ったわたしが甘かった。

家主を失ったトイレはしばらく水を流さなかったことでパッキンが乾燥し、水漏れを起こし始めていた。床も壁も抜け落ちそうなほど朽ちていたため、クリーニング作業が始まってから、”できない”と通達された。

見積もりと話が違うじゃないか。しかし、トイレの惨状に向き合ってくれただけでも感謝せねばなるまい。数万円を支払い、何となく綺麗になった実家をまた1人で片づけることにした。


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