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うち明ければココロは軽し。【ゴミ屋敷からのSOS】#5

父の病院に差し入れを届けて、ゴミ屋敷を片づける。そんな日々が続いた。その頃、わたしの頭を悩ませていたのは、父が入院したことを姉に告げるか、だった。遠方に住んでいるから、なるべくなら心配を掛けたくない。いや、本当に伝えたかったのは、ゴミ屋敷の惨状だ。

電話でSOSを出して、姉には週末に来てもらうことにした。そうでもしなければ、わたしもゴミ屋敷の藻屑となって、真っ暗な海の底に沈んでしまいそうだった。



週末、姉も巻き込んでゴミ屋敷の片づけが始まった。

床に広がった洋服の山を捨てる。時に虫と遭遇して、叫ぶ。トイレは相変わらず使えない。トイレのためにコンビニで買い物をする。お昼は近くのファーストフード店まで足を運ぶ。久しぶりに実家に帰ってきた姉は、変わりゆく街並みに興味津々だった。

それにしても、うっかりしていた。姉は片づけが苦手だった。まったく片付かない。出して、広げて、話して、終わる。典型的に片づけが苦手な人だ。

わたしも同じだ。トイレの度にコンビニへ行き、懐かしい家財道具に手を止める。夕方になっても、ゴミは居場所を変えただけだった。

ゴミ屋敷からのSOSは失敗に終わった。それでも、実家がゴミ屋敷となってしまったことを打ち明けて、きのうよりも心はずっとずっと軽やかだった。


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