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新しい命 【ゴミ屋敷からのSOS】#4

ゴミ屋敷は時として新しい命を生む。
狭い狭いベランダの、そのまた端に。




実家のベランダの隅には、使わなくなって何年も放置された植木鉢が積み上げられていた。几帳面に同じサイズが均等に積まれている。いかにも、自分ルールの激しい父らしいと思った。

植木鉢には穴が開いていて、穴の下に穴、その穴の下に穴、その穴の下に穴…といった具合に、無数の穴が層になっていた。その一番下。陽の当たらないベランダの端の、冷たい床と接していた穴。
新しい命はそこで生まれた。

割れものとしてゴミに出すために、わたしは植木鉢を移動した。すると、穴の中から真っ白な虫が出てきた。海で見るような、なんというか…エビのような、ゾウリムシのような。

神々しいまでの真っ白な姿。何層にも重なった穴の中で、太陽の光を浴びることなく生きてきたのだろう。ひとりゴミ屋敷を片付けている自分とも重なった。

そいつが仲間のように思えてきたわたしは、”アルビノ”と雑なあだ名を付けて、しばし同じ時を過ごすことにした。

編集後記:ベランダに一気に水を流して、アルビノとはおさらばしました。あれは新種だったかもしれないな~と今でも思います。

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