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あの頃のドラマと武田鉄矢と私

1991年、そのドラマが放送する夜は街中からオトナが消えたとも言われた。

小学5年生だった私は、放送翌日の朝、教室で友達や好きな男子が見た?見た?と言い合って盛り上がっていた会話に全く入れずに寂しい思いをした。
そう、そのドラマは「東京ラブストーリー」、
言わずもがな黄金期の月9大ヒットドラマである。「カ〜ンチ!セックスしよ!」はZ世代にはドン引かれると思うが、我々世代はみんな知っていると言っても過言ではない。

母は夜9時までに私と弟を布団に連行し、2人で寝るように言いつけ居間に消える。悔しい私は襖を1cmほど開け、こっそり覗き込むとテレビの前に座り込み、食い入るように織田裕二を見る母の姿があった。
最終回だけでも見せてほしいと懇願したけど、厳しい母は子供にはこのドラマはまだ早いと取り合ってもらえなかった。

そしてその年、私にとって忘れられないドラマが放送される。
そのドラマは「101回目のプロポーズ」。
99回もお見合いで断られ続けた武田鉄矢演じる冴えない中年サラリーマンが100回目に現れた浅野温子演じる身も心も美しいチェリストに一目惚れし、冷たくされても断られても愛し続けて最後は…という王道のラブストーリーである。ポイントは100回目じゃなく101回目なんですよね。

私はなぜか母から最終回だけ見ることを奇跡的に許された。
最終回放送後の翌朝、登校する前に早めに起きて録画した最終回を見る。生まれて初めてのドラマ、しかも最終回しか見てないのになぜか号泣し、目を腫らしたまま登校したのを今でも覚えている。

もうとにかくあの頃の武田鉄矢は最高なのです。全力で演じていて、その姿が胸を打つ。
よくモノマネされている「僕は死にましぇん!」も実際にドラマを見ると笑うどころか感動するんです。

最終回しか見てなかった小学5年生だった私もやがて中学生になり、再放送で全話見ることができ改めて感動、二十代になってまた見直してやっぱり感動、そして母になり、子と一緒に見て感慨に耽りました。
生まれて初めて見たドラマでなぜか時々繰り返して見たくなる、それが「101回目のプロポーズ」なのです。
このドラマには武田鉄矢の熱演の他にも"すべて"が詰まっている。
諦めない心、負けて勝つ、本当にカッコいいとは何か、友情、兄弟・姉妹愛、そして爽やかな竹内力の姿。

あの頃のドラマの熱はあの頃にしか持ち得ない特別な何かがあった。それは自分というフィルターを通して思い出として強烈に残る。
今はほぼ全てのドラマが配信され、いつでも見られるようになって便利にはなったが、熱が分散されてしまったことは否めない。
それでも昔とは違う形の熱が発生するドラマをいつか見られるといいなと思う。そんなドラマを子と一緒に見られたら最高の体験だ。

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