【対決の東国史5】『山内上杉氏と扇谷上杉氏』を読んだ話。
吉川弘文館さんの【対決の東国史】シリーズ5巻、『山内上杉氏と扇谷上杉氏』を読んだ話を書きます。
そもそもなんでこの本を読んだかと言うと、ゆうきまさみさんの『新九郎、奔る!』を読んでいて、関東の中世史について知らないことが多すぎる己に慄いたからなんですね。
室町時代って、足利一族はみんな京都に行ってるんじゃなかったの?
関東は、打ち捨てられた原っぱみたいな状態じゃなかったの?(気分は平城京跡)
……というような認識だったので。
かろうじて太田道灌の噂は仕入れていたものの、関東管領とか、古河公方とか、あの~皆様、どういったことで争われてるんで? な状態でしたので、手っ取り早く両上杉氏を知る参考書として、読みました。
はい。
で、泣き言。
日本史って、似たような名前の一族が多くて、もう区別がつかない~。
そもそもの発端的な上杉重房が、鎌倉幕府6代将軍となる宗尊親王のお供のひとりとして鎌倉に下向し、娘を足利頼氏の室の一人に入れたことが、上杉家発展の始まり。
その頼氏室となった娘が家時(尊氏祖父)を産み、重房の息子・頼重も娘・清子を家時の子・貞氏の室とし、産まれた子が尊氏&直義兄弟。
足利将軍家の外祖父である頼重の子らが、山内上杉やら扇谷上杉やらに分かれていくわけです。
上杉家的には、うまいこと取り込んでいった足利家が大出世したわけで、その血縁的ポジションから、鎌倉府の補佐的地位を得た……と考えていいんですかね?
しかし、一族が繁栄して地位が上がっていくほど、身内内でのもめごとも増えていくわけで。
この上杉一族が絡む(関東管領という立場上、絡まざるを得ないものも含む)戦が、15世紀の100年間に7回もあり、ほぼほぼ軍事出動してません?
いや、確かに西でも応仁の乱とかありましたし、あっちはあっちで泥沼でしたけどね。
てか、この時期って世界的な寒冷気候がまだ抜けきっていなくて、農作物が不作続きだからこそ、社会不安にもなるし、国も荒れるわけですが。
まあ温暖なはずの16世紀に、戦国時代をやってるような国ですから、ちょっとよくわからないですね。
関東がこれだけ荒れた要因としては、もちろん寒冷化もありますが、個人的には「なんで鎌倉公方を置いちゃったのかなぁ……」です。
東西で分割統治みたいな形にしつつ、結局は室町将軍の方が上で、でもスペインの副王みたいな期限付き統治者ではなく、鎌倉公方自体が相続制になってる。そして、鎌倉公方と室町将軍の間に管領が入るわけですから、どうしたってもめるでしょ。(結果論ですけどね)
山内上杉家と扇谷上杉家も、外に敵がいるうちは共闘してるのに、平定した後は内輪もめをやらかして、結果的に伊勢宗瑞を呼びこむことになる。そして、弱体化の道をたどる。
日本史を読んでて本当に思うんですけど、権力闘争ばっかりやってますよね。いや、それが生き残るための道だと言われれば、そうかもしれないんですけど。
でも、内戦ばっかりやってたら、みんな疲弊するだけじゃん、って意識はなかったんですかね。
米の収穫量が少なければ、戦やってないで、収穫量を増やすための手立てをもっと工夫するとか、まるっきりやってないとは思わないですけど、それでもよく諍いをおこすよねえ。
大陸から離れたどん詰まりの島国で、しかも関東の分割統治地だから、外国との交渉なんて考えもしなかったんだろうけど。
鎌倉公方(古河公方)も関東管領も、一応権力者じゃん。
その責任ある地位の者が、目の前の権益しか考えてなかったのかなあと、思いますよね、それは。
で、そうやって戦ばかりしてたら、当然小集団から消滅していくのに、山内上杉家の家宰職継承問題で反旗を翻した長尾景春が、意外といつまでも生き残って戦っているという、ありえなさそうなことも起こったりするわけで。
しかも何度も敗退したりして、もう絶対あかんやろ、と思ったのに数ページ先で生存確認されてるとかね。
生きるか死ぬか、成功か失敗か、それはもう方程式を越えた運の力もあるんじゃないかと、思ってしまうのでした。
今回『山内上杉氏と扇谷上杉氏』を、純粋に「この人たちってどういう一族なん?」と思いながら、教科書を読むように読みました。
それで、どういう一族か理解できたのか? 個人個人の名前も非常に心もとなく、大きくくくって「関東で権力を持ちながら内戦やった一族」というありさま。
この本がビギナー向け入門書としていいのかどうか、その辺も入門者ですからわかりかねます。
ま、一度読んだ程度で、この時代についてわかった気になるのはおこがましい、というのはありますね。
それにしても歴史の本の感想って、小説の感想に比べると、なんかやりにくい気がするのは私だけですか?
しかも、全然知らない時代・地域の本って、基本的にひれ伏しながらご高説を賜る気分で読んでるふしがあるでしょ?(私だけ?)
それちょっと……ってツッコミを入れられるようになるまでは、それなりに読んでいかないとダメだし。
「よくわかりました~」「勉強になりました~」「面白かったです~」子どもの感想じゃん。
子どもの感想を卒業できるように、なんとかいろいろ読んでいきたいです。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
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