食料自給率と農産物輸出と新自由主義と需要供給曲線と国家の責任について考えた。

ねえねえ、みなさま、みなさま。
食料自給率を計算するときの農業生産量に、輸出用農産物も入ってたってご存じでした？
今朝、珍しくつけたテレビで、輸出用米を作っている農業法人さんが出ていて、国内向けの農作物じゃなくても、作れば作るほど食料自給率が上がるというお話で、ちょっとびっくりしてしまいました。

国民が米不足でばたばたしてる中、輸出用の米を作ってる企業を取材してるし、コスト削減で米を輸出できる話を放送してるけど、どんだけ生産しても国内流通させないんだったら国民は飢えるんじゃない？ #羽鳥モーニングショー

— ほんのよこみち📝 (@honno_yokomichi) August 21, 2024

いや、だって、今、米不足だし。
スーパー行ってもお米が買えなくて、パックのご飯とか、うどんを買ってしのいでるし。
「国内消費はもう増えない」なんて番組で言われてましたが、いやいや、需要に供給が追い付いていないんじゃん。
と言うより、ひょっとして輸出した方が利益が見込めるから、国内向けに売りたくない？　だから米不足なの？

そういえば与党の政治家の方も、「農家の皆さんには経営の規模拡大などによるコストカットで利益を上げる努力をしてもらう」……みたいなことを言われてましたね。
大規模化して、無駄を削減して、利益を出すために輸出用作物をつくって、政府に頼らない自立経営をしてもらって、結果的に食料自給率は上がったとしても、国内のスーパーに食料が並びにくい社会でも仕方ない、ってこと？
それってもう、国民が飢えても、企業が利益を出すためには仕方ないよね、っていうこと？

国民を飢えさせないって、国家としての一番の責任じゃないかと思うんですが、どうでしょう。
中国だって、有事の際に国民が飢えないだけの貯えを確保することを考えている。大躍進政策で大勢の人民が餓死しましたからね。善政を敷いている建前は維持しないと、存在の意味が問われかねないので。
日本って、建前上は民主主義国家なのに、民が主じゃないよね。

で、ですよ。
先月『高校生のための経済学入門』を読んだことを、ちょっと思い出しました。

この本の中で、需要と供給の力が働くから、物価は安定する方向に向かう、というようなことを説明されていたんですが。
需要と供給がバランスを保つのって、あくまで地産地消が前提じゃない？
世界的に食糧難の状況で、高い需要が見込めるところにどんどん生産物を持って行って、高い水準で価格が安定する方向に力が働いたら、その高価格に対応できない庶民は、食料加工工場や流通業界で働いていても、目の前を通り過ぎていく食料を買うことができず、飢えて死んでいくだけでは？

まあ、いつの世も貧困国の立場はそういったもので、日本もかつては東南アジア諸国の農業生産力にたかっていた部分があるので、偉そうなことは言えません。立場が逆転して、日本が貧困国に堕ちた、だからこれから飢餓の時代が来る、それ。

でもそれで、「飢えるのも貧乏人が努力してないから」なんて言ってたら、社会は冗談抜きで崩壊するので、努力して自分は高所得者なんだと思っている人々も、明日は我が身ですね、ほんと。
30年間、大企業が下請け孫請けの中小零細企業を買いたたいてきて、体力のなくなった零細企業が廃業していったからこそ、日本のモノづくりは衰退してきた、その事実を教訓として学ぶべきなんですよ。

社会の底辺にいる庶民が、社会インフラを支えているからこそ、今の日常が成り立っている。
飢える人が出てきたら、治安はもっと悪くなるし、人口がもっと減ってしまったら、農地や民家の周りに熊や猪、猿などの野生動物が出てきて、とても今のような平穏な生活は送れなくなる。
もしくは、海外の投資家による買い漁りが激しくなり、地域行政が海外投資家の意向に左右されるようになる。日本全体がリゾート地化すれば、外国人の顧客に奉仕する下僕状態ですね、日本人労働者は。

いや、なので、目先の利益のために、目の前の隣人を粗末にするのって、結果的にみんなの首を絞めるだけなのでは？　とめちゃくちゃ思うんですが、でも、利益を出すのも出せないのも自己責任と思っている方は、自分だけはうまくすり抜けられると思ってらっしゃるんですかね。
海外に拠点を移せばいい、と思ってる方もいらっしゃるかもしれませんが、それだって日本という国がそれなりに存在している前提があるから、海外に住んで生活を確保できるんですよ。母国がなければどうなるか、クルド人やユダヤ人の歴史から何も学んでないんですかね。

農家の方々に、国内向けの農産物をつくっていただくための補助金を出すことは必須でしょう？　武器なんかより、よっぽど国防の意味があります。
この国をどう経営してくか、というビジョンが、今の政権与党にどれくらいあるんですかね。インバウンドで景気回復……など、正気の沙汰とも思えない。
外国人観光客に来てもらって、日本のことを知ってもらうことが、日本の国防に役立つだろう、というのはわかりますけどね。

でも、需要と供給のバランスが取れない状況に陥ってるのだから、政府が将来を見据えた対策を取らなきゃいけないんですよ。それが国家の責任。

変なハコモノ作ったり、クーポン発行しまくったりするんじゃなく、農家に補助金出して農産物はど～んと買い入れる。
豊かな社会をつくるために、国民に過度な椅子取りゲームを強いない。

そういう方向で政治をやってくれる人が自民党総裁選に出馬するなら、それは応援しますけどね。
昔はまだ、そういう人が自民党にもいたんですけど、責任の自覚がないと、人間つまんないですね。