【読書記録】『脱原発区長はなぜ得票率67%で再選されたのか』を読んで考えたこと。
世田谷区長・保坂展人さんの『脱原発区長はなぜ得票率67%で再選されたのか』(……長い)を読んだ話をします。
この本は、斎藤美奈子さんの『あなたの代わりに読みました』で取り上げられていたので、読みました。
世田谷区長・保坂展人さんの2016年の本で、区長選挙の話、区長としての行政の話、学生時代からジャーナリスト、市民活動家を経て、国会議員時代の話が綴られています。
私はこの本を読むことで、先の都知事選において蓮舫さんが票を伸ばせなかった、その理由を探りたかったんですね。
保坂展人さんはもともと社民党の国会議員で、そのころの社民党は既に野党第一党だった社会党ではなく、状況としては今の立憲民主党より不利だったにも関わらず……なので。
で、勝因としては、
① 政党色を出さない
② 「安部NO」(政府自民党NO)を出さない
③ 95%は現状維持、5%改革の姿勢を出す
が、先の都知事選の蓮舫陣営との違いかなあ、と思いました。
政党色を出さない
保坂さんも、社民党が弱小政党になってしまったので、党を前に出すことが不利になると書かれています。政党の支持者だけが支持するんじゃ、勝てませんからね。
一方の蓮舫さんも、無所属で立候補されましたが、立憲民主党や日本共産党、社民党の有名議員さんが応援に入り、野党連合的な感覚になりました。
90年代、00年代なら、勝てない選挙じゃなかったと思うんですが、野党支持派だけでは、もう勝てないんですね。
政権NOを出さない
首長選挙は国政選挙ではないのだから、政権へのNOは出さない。応援演説をしてくれる人にも徹底してもらう。
これは、政権支持派の人も排除せずに、住民として守る。その意思の表れなんですね。
保坂さんの考え方の中に、「持論にこだわらない」というのがあって、要は問題解決できる良案があれば、主義主張の違う人の意見も聞いて集合知を目指すと。ご自身の意見も、どんどんバージョンアップさせていくと。
区民の生活向上が優先事項だし、そこから区長は逃げられない、と。
まあ昨今は、行政に対する考え方も多様……と言ってしまっていいのかどうか、持論にこだわる方が、世田谷区政に対して異論を投げかけている部分も見受けられますが。
より弱者を守るのが政治だと、個人的には思いますけど、誰もが簡単に弱者になる時代ではあるので、まあ一切批判がないなんてことはないですよね、民主主義社会だから。
95%は現状維持、5%の改革
やっぱり人間って、急激な変化には拒否反応を示すんですよね。
小池百合子氏が三選したのも、現状維持を望んだ人が多かったから。
正直、東京はどんどんぺらい街になっていってる気がしますが、そのぺらさがいいという人もいるんだろうしなあ……。
なので、95%は現状を維持し、5%の改革をするというスタンスは、安心感もありつつ、改革の成果も目に見え、非常にバランスの良いあんばいなのではないかと思いました。
今の50代以上は、90年代の野党連立政権(日本新党・新党さきがけ、新生党、日本社会党、公明党、民社党、社民連の連立政権)や自社さ連立政権(自民党・日本社会党・新党さきがけの連立政権)も知っているので、野党系首長になったってそんなに大幅な路線変更はない、と想像できるんですが。
自民党政権・自民党系首長しか知らない人には、怖いんだと思います。
昔も「社会党が政権取ったら、日本は社会主義国になるのか?」なんて言ってたし。
あ、小池百合子都知事って、もともとは日本新党だったわ。
おわりに~持論・党是より市民の生活を守って
この本の、国会議員時代のくだりで、当時自民党の幹事長だった加藤紘一さんの言葉が印象的だったので引用させていただきます。
90年代の自民党って、こういう政党だったんですよね。
今、自民党も野党も、党の主張にこだわりすぎていませんかね。
在民のためというより、党勢の拡大を目的とした連立や共闘をやるから、特に野党は足を掬われるし、小異にこだわるから、分裂を繰り返す。
政党と市民と、どちらが大事なのか?
その政党の考えた政治だけが、市民生活を守れるものなのか?
この本を読んで、保坂区政から学べる部分はどんどん学ぶべきだと思いましたし、持論にこだわらない、自分の発言に責任を持たなくていい(良いと思われる意見に切り替えていい)というのは、そのまま人生に応用できるなと考えました。
言ってること前と違うじゃん、て言われても、バージョンアップした方がみんな幸せならば、それでいい。
保坂区政に異論があったって、いいと思うやり方はマネりゃいい。
それに気づけただけでも、読む意味があったなと思いました。