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【読書記録】吉田修一「横道世之介」 

 今回は吉田修一の作品「横道世之介」を読みました。

  時代はバブル真っ只中。長崎の田舎から出てきた世之介は東京の荒波に流され、翻弄されながらも楽しい大学生活を送っていく物語です。全部で12個の章に分かれており、4月から3月までの大学一年生の一年間を描いています。
  世之介はぼーっとしていて、周りに流されまくる頼りない大学生です。ただ、いつでもマイペースで楽観的、そして困っている人がいたら思わず声をかけてしまうような、そんな素敵な人柄も垣間見えます。
  本文の中で、大学時代の友人の加藤が大人になってからパートナーに対して

あいつに会ったっていうだけでなんかお前よりだいぶ得してる気がするよ。

と言っていますが、まさにこのような人物なのです。

  なんといってもこの本の魅力は、一つ一つの出来事がいちいち面白いことでしょう。殺人事件やそこまで大きな事件が起こるわけではありません。けれど ”あの時代ならこんな事件ありそうだな”  とか ”こんな経験確かにあるわ”  というような身近なプチ事件がどんどん発生します。
  例えば、もらったダンスパーティのチケットを持って六本木会場まで行ったら、ジーパンをはいていたせいで入れない、なんて事件が起こります。しかもそのあとおとなしく帰るのではなく、、続きは是非読んでみてください!

  さらに出てくる人物が魅力的過ぎます。決して完成されているとか、強い個性があるとかそういうことではなく、 ”確かにこんないいやついるよなー”  といった感じのキャラクターがたくさん出てきます。世之介も含めてこんな愉快で楽しい人たちと大学生活を送れたらな~なんて思ったりします。
  バブルの時代というのも手伝って、全体的に大らかで楽観的な雰囲気を存分に感じ取れる作品です。

  そして世之介の恋愛もなんだか素敵です。出会い方もありそうなものながら、付き合い方も普通じゃないはずなのに、なんだか親近感がわいてきます。本当に一つ一つの出来事にくすっと笑えて、予想のできない展開の連続に思わず虜になってしまうでしょう。

おわりに

  今回は横道世之介でした。以前におすすめの本でも挙げたように読みやすくて、どんな人でも絶対に楽しめる作品になっています。機会があれば是非読んでみてください! 


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