【イベントレポ】『ディノサン』×『ディノペディア』SPディノ愛トーク(前編)
架空の恐竜園「江の島ディノランド」を舞台に描く初の恐竜飼育漫画『ディノサン』(新潮社)と、恐竜にまつわる様々なワードをゆる絵とともにガチ解説したイラスト恐竜百科『ディノペディア』(誠文堂新光社)。
令和に生まれたこの“2大ディノ本”の著者陣、木下いたるさん(『ディノサン』著者)×G.Masukawaさん(『ディノペディア』著者)×ツク之助さん(『ディノペディア』イラスト担当)によるオンライントークイベント
《『ディノサン』5巻発売&『ディノペディア』重版記念トーク ホーリーディノナイト〜聖なる夜にディノ愛を語ろう〜》
が開催されました。
2023年12月22日、クリスマス直前に行われた、ホーリーな夜の恐竜(ディノ)愛あふれるトークの模様を、前編と後編に分けてお届けします。
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隣の“ディノ”は青く見える!? 著者陣によるディノ本クロス紹介
令和の恐竜戦争
ーーまずは『ディノサン』最新刊5巻発売、そして『ディノペディア』重版、おめでとうございます!
全員:ありがとうございます!
木下いたる(以降、木):(『ディノペディア』著者陣に向け)重版おめでとうございます。いちばん嬉しい言葉ですね、「重版」。
G.Masukawa(以降、M):『ディノサン』の奥付を見ると版を重ねすぎていてちょっと引いたんですけど。
木:いや、本当にありがたいことで。「重版」という言葉が、いちばん、ご飯がおいしい(笑)。
ツク之助(以降、ツ):「重版」の響きでご飯3杯いけますね。
ーー今夜は、そんな大人気の『ディノサン』と『ディノペディア』の良さを、せっかくなのでお互いに紹介しあっていただきたいと思っております。
まずは『ディノサン』について、Masukawaさんとツク之助さんにお聞きしたいのですが、『ディノサン』を知ったのはいつ頃ですか?
M:ぶっちゃけますと、実は『月刊コミックバンチ』で連載が始まる(2021年5月号)よりも前に、木下さんとは知り合いでして。
木:そうですね、2016年か2017年くらいから。
ーーそうなんですね!
M:なので、連載が始まった時も、これは強いのが始まったと、これは負けるかもしれないという危惧があって、あえてその時は買わずにいたんですけど。でもある時、私の大学時代の先生の自宅に遊びに行ったら『ディノサン』が机の上に置いてあって、自らの負けを悟りました。
木:負けとかじゃないですけど(笑)、ありがたいです。
M:なので、今日こういった対決の場を設けていただいて、感謝しています。
ーーツク之助さんは、連載スタート時からご存じでしたか?
ツ:その前にSNSで存じ上げていました。で、Masukawaさんとまったく同じ感想になっちゃうんですけど、当時からめちゃめちゃ絵がうまくて、こっち(イラストレーター)に来たら私の仕事がなくなるぞと(笑)。でもその後に漫画の連載が始まって、やっぱり絵がすごい上手なんですよ。もうこのまま『ディノサン』で漫画家として大成功されて、こっちにはぜひ来ないでいただきたいと思っています(笑)。
ただの恐竜漫画じゃない
ーー(笑)ちなみに、『ディノサン』で好きなキャラクターや好きなシーンはありますか?
M:私は角竜が好きなので、全体的にマサル(左の角が折れたトリケラトプス)が出てくるシーンは全部好きですね。
ツ: 私は2巻のベンケイの回。トロオドンの赤ちゃんが生まれて、すずめちゃんの家に来るんですけど、はじめはおとなしいなと思っていたらお風呂に入っている間に部屋がめちゃくちゃになるっていう(主人公の新米飼育員すずめの初めての担当恐竜、トロドオンの雛ベンケイを、すずめが自宅に連れ帰り、世話をする回)。私も爬虫類を飼っていて、うちの子はフトアゴヒゲトカゲっていう比較的おとなしい爬虫類なんですけど、同じ爬虫類飼いの人とオンラインゲームとかをしていると、画面の向こうで爬虫類に食われてたりするんですよ。10分おきくらいに「いてててて」って聞こえてきて。この回を読んだ時に、「これだー!」ってなりました。『ディノサン』はただの恐竜漫画じゃなくて、飼育だったり、動物園経営の難しさなんかもちゃんと描いているところが好きです。
M:思っていた以上に、ヘビーなところもシビアなところもちゃんと描いてますよね。
ーーそのあたりは、ちゃんと取材をされて、実際に聞いたお話を反映していたりするのでしょうか。
木:もともと動物園のシステムや仕組みに興味があって、そのような本もたくさん読んできましたし、動物園に行ってそういうイベントに参加したり、取材したり。とにかくずっと本を読んでいるか調べ物をしているか時々外に出て取材をしているかって感じですね。説得力が大事だと思っているので。
完璧なお弁当
ーー調べ物といえば、『ディノペディア』も愛読されているとうかがいました。
木:SNSで情報が出てすぐに予約しました。
M&ツ:ありがとうございます!
ーーではこの流れで、『ディノペディア』の紹介をお願いしてもいいでしょうか。
木:本当にたくさんあるんですけど、最初に言いたいのは、「こういう本を待っていた」ってことですね。僕も職業柄いろんな恐竜本を読んできましたけど、恐竜の知っておきたい事柄の簡潔な解説が1冊にまとまったこういう本ってこれまでなかったと思うし、恐竜の本ってこれ1冊あればいいんじゃないかってくらい画期的な本だと思います。知人におすすめの恐竜本を聞かれたら自分の漫画よりもまず『ディノペディア』って答えるくらい。
ーー特にどのあたりがおすすめですか?
木:まずは信用に足る内容。Masukawa氏の知識と長年の経験、積み重ねてきたものがちゃんとしているという背景を知っているので、個人的に信頼できると思っています。あと、サイズ感も良くて、必要なものがちゃんとコンパクトにまとまっている。それからツク之助さんのイラスト。ツク之助さんのイラストは老若男女嫌いな人はいないので。まだ文章が読めないお子さんでも、パラパラするだけでも楽しい。恐竜ってわからないことが多い分、簡略化したりすると誤解が生じてしまうこともあったりして、だからこそ簡潔にまとまりすぎた本が多いと思うんですけど、『ディノペディア』は真正面からちゃんと難しいことを書いていつつ、ツク之助さんのイラストが誰でも手に取りやすくしていて、本当にバランスのいい本だなって思いますね。例えるならお弁当みたいな。子どもの好きなハンバーグも大人の好きな煮染めもちゃんと入っていて、見た目も華やかで、かつ味もシェフの長年の経験と技術の出汁がちゃんときいている。完璧なお弁当。お弁当みたいにカバンに忍ばせて博物館に行きたいですね。
ツ:あ、ありがとうございます……! どうしよう、我々、すごいフワッフワな感想を言ってしまったんですけど。
M:著者ですけど、自分の本をこんなに完璧に紹介できない……2ラウンド目も敗北を噛み締めてます。
ーー戦わないで(笑)。
木:でも本当に、そう思ってます。iPadの左側にいつも置いてます。
ーー執筆中に読まれることもありますか?
木:そうですね。実際に『ディノペディア』で調べたり、あとは息抜きで読むこともあります。本当に今もここに置いているので、写真撮って送りたいくらい。
ツ:『ディノサン』も、要所要所で恐竜についての説明がちゃんと入っていたりするんですけど、説明のないところでも、例えばディロフォサウルスが魚を獲る時に瞬膜を閉じていたり、細かいところをちゃんと描いていて……。
木:そのあたりは監修の藤原慎一先生のおかげで、だいぶ解像度が上がっています。
M:小ネタとか、遊び心のところも、ちゃんとわかっている人が描いている、そういう抜かりのなさが、恐竜ファンとして嬉しいなと思いますね。恐竜の漫画として読んでも、あとは一つのお仕事漫画として読んでも楽しめるというのが、個人的にはすごく好きです。
木:これ、あれですね。自分の漫画を紹介されている時、画面見れないですね。
後編へ続く
(聞き手:星詩織 / 編集:藤本淳子)
⚫︎登壇者プロフィール⚫︎
木下いたる(きのした・いたる)
『ギガントを撃て』(講談社)でデビュー。イチオシの恐竜はギガノトサウルス。
G. Masukawa(G・ますかわ)
サイエンスイラストレーター、ライター。
博物館やイベントの展示制作のほか、学術論文や専門書の図版を多く手がける。最近は流しの何でも屋。著書に『新・恐竜骨格図集』(イースト・プレス)、訳書に『アフターマン』、『新恐竜』(ともにGakken)。茨城大学大学院博士前期課程修了(地質学・古生物学)。イチオシの恐竜はトリケラトプスとドリプトサウルス。
ツク之助(つくのすけ)
いきものイラストレーター。 爬虫類や古生物を中心に生物全般の復元画や商品デザインを描く。 著書に絵本『とかげくんのしっぽ』、『 フトアゴちゃんのパーティー』(共にイースト・プレス)。イチオシ爬虫類はフトアゴヒゲトカゲ。
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