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南方熊楠が愛した自然豊かな九龍島(和歌山県串本町ほか)
「名勝」とは、日本における文化財の種類の一つ。本連載では国指定名勝の庭園、峡谷、海浜、瀑布などを、臨場感あふれる撮りおろし写真で紹介します。旅に出たような気分で、日本の美しい景勝地の数々をお楽しみください。(ひととき 2018年1月号「名勝アルバム」より)
古座(こざ)川上流から運ばれてくる寒気が暖かな熊野灘に流れ込み、海霧が生まれる。立ち込める靄(もや)のなか次第に輪郭を顕した九龍島(くろしま)(左)と鯛島の間を、朝日が昇っていく。
九龍島は古座川河口の沖合に浮かぶ、周囲わずか二キロの小さな無人島だ。源平合戦で名を馳せた熊野水軍の居城とされ、洞窟には海賊伝説が残る。山上には、漁師たちの守り神である弁財天が祀られているという。
かつて生物学者の南方熊楠(みなかたくまぐす)が、島固有の豊かな植生を求めて訪れた場所でもある。
「植物が黒々と生い茂っていたことから黒島、転じて九龍島になったともいわれます。アオノクマタケランやオオタニワタリなど亜熱帯性の植物群落が見られる、自然の宝庫なんですよ」と、地元ガイドの神保圭志(じんぼけいし)さん。
日が完全に昇った後、海釣り船で九龍島に渡った。藪を漕ぐようにして進み頂上に立つ。木々の向こうに、冬の海とは思えぬほどに透き通った、青い水面が広がっていた。
森 武史=写真
◉名勝指定 平成27年(2015)10月7日
九龍島
和歌山県串本町古座
[問]古座観光協会
☎0735-72-0645
http://kokoza.com/
南方熊楠(1867~1941)は、「特有の天然風景」に潜む森羅万象を密教の曼陀羅になぞらえ、多様な生態系に基づく風景美の保全を訴えた。こうした熊楠の風景観を継承する、九龍島を含む熊野・南紀地方の13カ所が「南方曼陀羅の風景地」として名勝に指定された。
出典:ひととき2018年1月号
※この記事の内容は雑誌発売時のもので、現在とは異なる場合があります。詳細はお出かけの際、現地にお確かめください。
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