【大院子】ガジュマルの老樹が生い茂る歴史再生空間|『増補版 台北・歴史建築探訪』より(3)
台北帝国大学の教職員住宅が集まっていた旧昭和町は、家屋や樹木の保存運動が盛んなエリアである。地域住民のみならず、この界隈で生まれ育った湾生(台湾からの引揚者)たちも日本で「昭和町会」を組織しており、多くの記録と証言を残している。
ここは台北帝大が設けたクラブであり、「単身官舎クラブ」とも呼ばれていたようである。ただし、詳細は長らく謎で、戦時期は海軍が所有する士官招待所にもなっていた。そして、終戦直後の時期は引揚を待つ在留邦人子弟のための日僑学校として使用されたこともあった。1952年からは国立台湾大学が管理者となり、教職員宿舎として使用されるようになった。閉ざされた空間であり、内部の様子など、詳細を知ることはできなかった。
老朽化もあって、台北市はこういった老家屋の撤去を進めたが、2012年11月1日、ここは保存指定を受けた。しかし、翌年2月5日未明に火災に遭って焼失。その後、3年以上という歳月をかけて修復工事が行なわれた。
現在はカフェとギャラリーになっている。オープンは2019年10月7日のことだった。敷地は広く、散策に訪れる人は少なくない。
文・写真=片倉佳史
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▼大院子(旧台北帝国大学昭和町クラブ海軍士官招待所)
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