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【AKA café】洋館の雰囲気の中で楽しむくつろぎの時間|『増補版 台北・歴史建築探訪』より(9)
台湾在住作家である片倉佳史氏が、台北市内に残る日本統治時代の建築物を20年ほどかけて取材・撮影してきた渾身作『台北・歴史建築探訪』。このほど発刊される増補版では、初版の171件に加えてコロナ禍でリノベーションしたレストランやカフェなど40件が追加されています。この連載では、『増補版 台北・歴史建築探訪』より一部を転載し、ご紹介致します。
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ここ数年、大稲埕地区では老家屋を再生させたカフェやショップが次々と誕生している。「AKA café」は予約制のカフェで、民樂街から路地を入った先にある。喧騒とは無縁の場所で、ここが台湾であることを忘れてしまう。
家屋は和洋中の折衷様式と言うべきもの。赤煉瓦の壁や老タイルが敷き詰められた床を差し込んだ日差しが優しく照らす。中庭には緑が生い茂り、小鳥のさえずりが聞こえてくる。
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隠れ家的存在のカフェ・バー。
ここに暮らしていたのは郭烏隆。地元の名士で、海産物や雑穀、小麦粉、砂糖などを扱う卸問屋「郭怡美商行」を営む一方、数多くの組織の理事や監事などを務めた。1925(大正14)年には実業家・辜顯榮が孔子廟の建立を発議したが、その際にも建設資金を寄付した有志であった。
カフェのオーナーであるネオ氏は著名なインテリアデザイナー。修復に当たっては、建物の趣を保つために大がかりな工事は避ける一方、内装にはモダンなデザインを盛り込んだという。
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1階の客間の壁は淡い紫色に塗られ、気品溢れる空間となっている。2階では台湾茶道や香道の教室、3階では生け花教室が開かれることもある。
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台湾に息づく「大正ロマン」。華やかなりし頃の雰囲気が再現された空間である。
文・写真=片倉佳史
──今回発刊された増補版では、コロナ禍でリノベーションしたレストランやカフェなど、実際に訪れたくなる約40件を新たに追加して計211件が掲載されています。美しい建築写真をご覧になり、日本人と台湾人がともに暮らした半世紀を振り返れば、きっとまた台湾を旅したくなるはずです。ぜひお楽しみください。
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片倉 佳史 (かたくら・よしふみ)
1969年生まれ。早稲田大学教育学部卒業。武蔵野大学客員教授。台湾を学ぶ会(臺灣研究倶楽部)代表。台湾に残る日本統治時代の遺構を探し歩き、記録。講演活動も行なっている。妻である真理氏との共著『台湾探見 ちょっぴりディープに台湾体験』『台湾旅人地図帳』も好評。
●ウェブサイト「台湾特捜百貨店」
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