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【竹田の姫だるま】しあわせの微笑みを未来につなぐ縁起物(大分県竹田市)

日本全国の“地域の宝”を発掘する連載コーナー「地元にエール これ、いいね!」。地元の人々に長年愛されている食や、伝統的な技術を駆使して作られる美しい工芸品、現地に行かないと体験できないお祭など、心から「これ、いいね!」と思える魅力的なモノやコトを、それぞれの物語と共にご紹介します。(ひととき2023年12月号より)

 たおやかに微笑む「たけの姫だるま」。竹田市で約400年前に生まれた女性のだるまは、家庭円満・商売繁盛の縁起物として親しまれ、旧岡藩時代には下級武士の内職として作られていたが、戦時中に途絶えた。このだるまを戦後に復興したのが、ごとう姫だるま工房。2代目の後藤めいさんは「初代・後藤つねが、皿に描かれた姫だるまを見て、『この地の文化を復活させたい』とわずかに残るだるまや資料を頼りに作り始めたのが、今の姫だるまです」と話す。19歳で後藤家に嫁ぎ、義父である初代から製法を習って半世紀以上、この文化を守ってきた。

初代から使っている泥絵の具で塗り、墨でお顔を描いていく。人気のサイズは、なんと数年待ち!(上下写真)

 製作には16もの工程がある。初代が改良を重ねた木型を元に、短冊状の和紙や新聞紙を貼り重ね、背面に切れ込みを入れて木型から取り外す。底に重しを入れ、ふん塗りで艶やかな白肌にしたら、泥絵の具と墨で仕上げる。各工程で乾かし、また季節や天候で乾き具合が異なるため、娘を育てるような気持ちで時間をかけて完成させる。

「竹田では正月に姫だるまを各家に届ける風習『投げ込み』があり、昭和の時代は、深夜まで製作した大量の姫だるまを、近所の人と協力して隣町まで配達していました。今でも一般家庭や飲食店に届けています」と明子さん。現在はお嫁さんの久美子さんも3代目として携わり、大事なお顔は明子さんが長年の勘を頼りに描いている。

姫だるまに描かれた柄は、松はお父さん、梅はお母さん、胸元の竹は子どもを表し、家庭円満への願いが込められている 撮影協力=三日月珈琲店 月鐘楼〈げっしょうろう〉
背中に描かれた宝珠は厄除け、子孫繁栄を表している
姫だるまは、後藤家のお嫁さんに受け継がれてきた。中央・2代目の後藤明子さん、左・3代目の久美子さん、右・受け継ぎ手の宗子さん
姫だるまをミニサイズにした可愛い「姫のストラップ」

 豊かな自然に恵まれた竹田では、近年県外からの移住者も多い。旧酒蔵を改装した染色工房「紺屋 そめかひ」の職人、辻岡かいさんは学生時代に藍染めに魅了され、10年前に移住。畑で藍を育て、古来の藍染め技法で製品づくりを行ってきた。店内には藍染め製品とともにオリジナルの姫だるま柄の手ぬぐいや巾着も並ぶ。縁起物として、竹田で産声を上げた姫だるまは、現在、町おこしの役割も担っているという。お嫁さんが作る、この町の〝微笑み〟は、これからもしあわせの心をつないでいく。

引き染め*を行う辻岡さん。均等に塗ることが大切だという *染料を含ませた刷毛〈はけ〉を用いて、布を染める技法
「紺屋 そめかひ」には姫だるま柄など、辻岡さんが図案から手がけた様々な絵柄の手ぬぐいが並ぶ
姫だるまの手ぬぐいを使った巾着も販売

文=佐藤美穂 写真=佐々木実佳

ご当地INFORMATION
竹田市のプロフィール
大分県の南西部に位置し、熊本県と宮崎県に隣接。くじゅう連山や阿蘇山などの山岳に囲まれ、竹田湧水群を持つ、自然豊かな地域だ。市内の中心部は岡城の城下町として栄え、武家屋敷通りには、岡藩時代の面影も色濃く残る。町を歩けば通りや店内などで姫だるまの微笑む姿が見られる
問い合わせ先
ごとう姫だるま工房
☎0974-62-3735
https://goto-himedaruma.com/
紺屋そめかひ
☎0974-62-4188
http://somekai.com/

出典:ひととき2023年12月号

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