世界のブランド支える「播州織」の魅力とは? (ひととき2020年6月号特集のご紹介)
ほんのひととき編集チームのうさこです。はやいもので、このサイト「ほんのひととき」をオープンして1カ月が経ちました。おかげさまでご好評をいただいております。ご愛読ありがとうございます!
さて今回は、明日発売される「ひととき」6月号の特集を担当した編集者・齊藤さんにインタビューしました。普段からお洒落で明るい齊藤さん。もともと日本の伝統的な織物や染物が好きで、この特集には特別な思い入れもあるそうです。その思いのたけを語ってもらいました。
――特集のトビラの写真(ページ一番上の画像)、色とりどりのショールがとてもきれいですね。軽やかそうな綿素材の生地が、今の季節にぴったりな気がします。「播州織(ばんしゅうおり)」の魅力を一言で教えていただけますか。
先染めならではの発色の良さと、経緯(たてよこ)の糸を変えることで生まれる奥行きのある色合いでしょうか。綿織物を特産とする地域は他にもありますが、番手(ばんて・糸の細さの単位)の細い糸を使って繊細に織り上げる滑らかな肌触りも魅力だと思います。
コーン状の糸巻きに巻かれた緯糸(よこいと)。素敵な布になるべく待機中です
――播州織は海外のラグジュアリーブランドにも採用されているそうですが、(洋服のタグなどに)表示されるのは縫製をした国で、製品になるとどこの生地かわからなくなってしまうということに、なるほどと思いました。普段私たちが見過ごしがちな点に着目し、特集のテーマにしたのは、なぜなのでしょうか。
日本の繊維産業が世界のラグジュアリーブランドを支えていることはあまり知られていませんし、この機会に知っていただければと思ったからです。それと、これまで生地しか作ってこなかった地域が最終製品化に取り組んでいることを応援したかったということもあります。
播州織ブランド「タマキニイメ」のラボ。ここでは旧式の織機を使って風合い豊かな播州織を作っています。色鮮やかで、一体どんな布が生まれるのか見ているだけでワクワクします
――山々に囲まれた、3つの川が流れる兵庫県西脇市は、染色に必要な水資源が豊富で230年以上も前から播州織が盛んだったそうですね。
ちょっと意外だったのは、今も若いデザイナーさんたちが移住し、洗練された作品を作っているということでした。昔からの産業というと、その土地の人が代々続けているというイメージがあったので。西脇市が人を惹きつけているのでしょうか?
西脇市が人を惹きつけているというより、若い人たちの間で都市で働く必要性が薄れてきたからなのかもしれません。自分らしく働ける環境で精神的に豊かになれるものづくりを目指す若者が増えているのだと感じました。
「タマキニイメ」のラボでの製織の様子
――今回、誌面では紹介できなかったおすすめの場所などあれば教えてください。
西脇の名産である黒田庄和牛(神戸ビーフの素牛になる牛です)はもちろん美味しいのですが、多可町で育てられている「播州百日どり」の焼き鳥は絶品です。西脇市内の居酒屋や焼き鳥店などで味わえます。
西脇はまちを歩けば大きな川にぶつかります。写真は加古川。
――取材中、何か苦労したことなどありましたか?
その場その場で、頭の中に絵を思い浮かべながらディレクションしていくのは楽しくもあり、なかなか大変でした。取材前から「この画を総トビラに!」と思い描いていたものを、早朝の土手で計300枚近く撮影しました。しかし、編集部内の意見を聞いて結局トビラには別の写真を使用。自分の思い入れが強いものほど周りが見えなくなってしまうので、客観的な視点を大切にしようと思いました。
――それは結構ショックでしたね……。でも、その齊藤さんの強い思いと、編集部の冷静なジャッジでバランスがとれて、良い特集記事ができているのでしょうね。ありがとうございました!
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後日、齊藤さんが思い描いていたという写真を拝見すると、背景の景色とショールがうまく調和していて、素敵な写真でした。ただ一方で、景色の色合いが、6月号にしては青々としていないからと(撮影したのは3月上旬)、編集部が別の写真をトビラに選んだ、というのも分かります……。こういうところが、雑誌づくりの難しさなのではないかと思います。
齊藤さんのお話を聞いていて播州織への思いの強さに、うさこもぐっときました。今後ともぜひ頑張ってください!
トビラ用カットの撮影風景
糸の状態から染めるので色があせにくく、1000回洗濯してもほぼ色落ちしないといわれる丈夫な「播州織」。古くからあり、一時業績が低迷していたものの、今この播州織を使った服飾やテキスタイルのブランドが続々と登場しているそうです。ぜひ、ひととき6月号をご覧になり、今や”播州織ファン”が産地を訪れるまちをご堪能下さい。うさこも、雑誌を広げてその色彩の美しさにうっとりとしてしまいました。
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「タマキニイメ」さんでは現在、マスクの製造も行っているそうです。ひととき6月号では、マスクのほか播州織のティッシュケース、ハンカチをセットにして抽選で5名様にプレゼント(3点とも、一点一点色、柄が異なります)。詳細は本誌をご覧ください。