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「ひととき」の特集紹介

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旅の月刊誌「ひととき」の特集の一部をお読みいただけます。
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2024年9月の記事一覧

[高山祭]江戸期のスーパー彫刻家!谷口与鹿の超絶技巧(飛騨高山)

 谷口与鹿の彫刻家人生は15歳のころ受けた衝撃によって始まったという。すぐに花開いて、生き急ぐように駆け抜け、43歳という早過ぎる年齢で世を去る。その間に多くの不朽の名作が残された。  19世紀前半、山王祭の屋台・五台山に諏訪の宮大工、立川和四郎の彫刻が登場し、一気に高山祭の「屋台の彫刻」が進んでいくことになるのだが、その新鮮な美術に心を奪われたのが与鹿少年だった。高山の宮大工の家に生まれ、幼いときからそうした環境で育った少年は彫刻に夢中になる。並々ならぬ素質があったのだろ

[高山祭]絢爛な祭屋台が生まれたワケ(飛騨高山)

 高山駅に降り立ち、表に出たとたん清々しい気分に満たされたのは、縦横に走る道路のためだ。定規をあてたように端然としている。道の目指す先の空には山々の緑。駅を背にして歩きはじめた歩幅は、いつもより広くなっていただろう。  朝日が道を照らしている。老紳士が散歩の途中か、さりげなくゴミを拾っている。 「しばらく家族みんなで留守している仲よしの家の前なのでね、戻ったとき汚れとったら気の毒やから」と笑う。  あいさつして別れ、さらに歩くと市内の中央を流れる宮川が見えてくる。穏やか