読書記録「This is going to hurt」
日付はとっくに変わっているけれど、二週間も続いた海外出張の時差を引きずったままの頭には、眠気がおとなう気配がない。きっかり五時間のズレは執拗に体を牛耳っていて、帰国から一週間が経った今も、中途半端な昼夜逆転に悩まされている。夜な夜な、買ったばかりの17色の水性ペンを取り出して、見様見真似に彩色してみたりする。
乗り換えのクアラルンプール空港で購入した洋書も開いてみる。「This is going to hurt」(Adam Kay)はイギリスの研修医が日々の治療や医局での出来事をつづった実体験に基づく本なのだけど、とにかくイギリスのナンセンスなユーモアと人間臭さが混ざって傑作だった。電車で不用意に開くのは吹きだしちゃう危険があって注意が必要なくらい。でも、書評には「面白くて悲しい、痛みの伴うストーリー」と書いてあって、何だろうと思っていたら、後半に最大級の悲しいエピソードが載っていた。うまく向き合えなくて本を閉じ、それからずっと開いていない。作者はもう医者を辞めてしまったのだけど、今はコメディアンになっていると聞いてちょっと笑った(すごく適性があると思ったから!)。なんだか救われた気持ちもした。
調べてみたら、「産婦人科医アダムの赤裸々日記」というタイトルでBBCでドラマ化もされていた。作者がディレクションをしているのもポイントだ。
時差ボケに特効薬はないけれど、眠れない真夜中を動画視聴でやりすごすよりは、おもしろおかしいぺーバーバックに鼻をうずめて、あと何冊読み終えれば、通常のリズムに戻るかな。