356 詩 詩は恋を囁く
詩は恋を囁く
昨日の言葉が残っているうちに、
明日の言葉が降る前に。
灯りのともる時間のうちに、
朝日がすべてを照らす前に。
何もかもが違っていて、
其の中にあるはずの物は何もなくて、
探そうとしても気力はなくて、
何かを頼っているうちに、
大事なものはどこかへ消えてしまった。
誰かの声が聞こえているうちに、
自分の声が届く前に。
雨が音を立てて町を濡らすうちに、
風がなにもかもを吹き飛ばす前に、
在ると思った物を探しても、
其れがどこへ行ったのか誰も知らなくて、
貴女はきっと見つけたはずで、
訳知り顔の誰かに惑わされて、
見つからないなら諦めるしかない。
気の遠くなるような
有るだけたくさんの言葉をちりばめて
貝殻とガラス玉の中に閉じ込める。
何時かきっとまた、
勇気を持てる日まで。