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340 雑にやる、丁寧にやる
雑にやってみる
文章でも絵でも、アプローチとしてまずは雑にやってみる方法がある。雑にやることで、スタートを軽くできると思うならそうしてみるといい。批判的に書いているつもりはないが、いまちょっと批判的になっちゃったかな。
雑にやるぞ、なんて意気込む人はあまりいないだろう。だけど、これはけっこう役に立つ。とにかく手をつけてみることで見えてくることはいっぱいあるからだ。
もちろんデメリットも多い。雑なスタートをしたことによって、作品そのものを雑なものとして貶めて考えてしまうと、そのまま投げやりになって完成しないかもしれない。完成しても捨ててしまうかもしれない。
雑って、ある意味、勢いなので、バーッととにかくやれるところまでやってしまうため、満足してそのまま飽きてしまう可能性だってある。
一番厄介なのは、「雑だなあ」と第三者に言われることだろう。こっちは最初から雑にやるつもりでやっているのだから、雑に決まっている。それでも「雑だなあ」と言われるのは嫌なものである。
最短距離あるいは最短時間でゴールに到達できる可能性もある。それが望んだゴールかどうかはともかく、見えるところまでバーッと行ってしまう。この雑なやり方の特徴として、うまくいったらいったで、達成感はそれなりにあって満足してしまうから、雑なものが雑なまま残ることになる。
丁寧にやってみる
失敗はしたくないので、先を見通してからスタートしたい。一歩ずつ丁寧に進めたい。その気持ちも大事。
だけど、時間がかかりすぎるかもしれない。ゴールが遠すぎるかもしれない。第三者から「そんなに時間をかけなくてもいいのに」と言われる可能性もある。「時間がかかった割りには結果はそれほどでもない」と言われる可能性もある。
丁寧さにはそれなりの利点があるのに、結果から評価されると、雑にやったときと大差なかったりすれば、がっかりである。
それよりも、スタートがそもそも遅れがちだ。ここに突っ込んでくる人たちは多い。「まだやってないの」とか「まだそこ?」といった言葉の暴力によって、丁寧さは危機を迎えるのだ。
締め切りがある場合は当人も焦る。焦ってもいいことはないけれど、丁寧にやりたいがために時間をたっぷり必要とする。必要以上に時間をかけてしまうかもしれない。結果的にゴールに到達できない可能性を常に脅えながらの作業となるかもしれない。
そういうプレッシャーがあった方がいい人もいるし、ない方がいい場合もあるのでなんとも言えないけど。
最悪なのは「仕事は丁寧なんだけどね」の、「けどね」である。丁寧にやったんだから丁寧と評価されたらうれしいはずなのに、なんだその「けどね」は。こっちは締め切りギリギリ(あるいはちょっと伸ばしてもらったけど)でちゃんと完成させたんだし。なぜ「けどね」なの?
ハイブリッドでやる
最初から意図しているとは限らないが、雑さと丁寧さをハイブリッドでやることもあるだろう。最初丁寧にやっていたが締め切りが迫って最後は雑に。あるいは雑にはじめたけれど、どうしても気になるところが出てきてそこは時間をかけて丁寧にやる。
私のオススメは、このハイブリッド方式だ。これを人は「臨機応変」と呼ぶ。「なーんだ、そんな適当なことなの?」と思うだろう。しかし、この臨機応変にやるって、なかなか難しいことだと私は思う。これまで、いろいろな人と仕事をしてきたけれど、臨機応変な人はほとんどいなかった。当人は臨機応変と思っているようでも、ただ雑なだけの人はけっこういる。どこを丁寧にやるか、その勘所をわかっていないと、失敗しやすい。
では、臨機応変にやるための勘所を知るにはどうするかといえば、一度はなにかをバカ丁寧にやってみることだと思う。誰になんと言われようと、これ以上はやりようのないほど丁寧にやって最後まで完結させることで、どこを雑にやっても結果は変わらなかったかを知ることができる。
私は絵を練習しはじめて、最初はかなり雑にやっていたが、ある時からバカ丁寧にやるようになった。それはまだ勘所がわからないからだ。ひたすらやる。ただそれだけ。こういういわば修業っぽいことって、なにをやるにしても必要なんだろうなと思う。
テスト勉強にも似ている。ザッと最後までやって問題を解いて、間違えた問題だけを丁寧にやる、みたいな。よく間違えることには丁寧さで補うしかない。
もっともそれがすべてに対応できることなのかは私もわからない。自分の範囲でしか経験がないから。絵は完全に未知の領域なので、いくら丁寧にやってもコツはわからずじまいになる可能性だってあるだろう。そうなったら、そうなったで、またなにか試してみよう。そういう別の意味の雑さ、野蛮さは大切だと思う。
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