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小説 冷静と情熱のあいだ Rosso

「冷静と情熱のあいだ Blu」につづき、「Rosso」を読みました。

Bluと違ってRossoはゆったりまったりだよ~、と聞かされていました。
あまりそういう系が得意ではないと思っていたのですが、それは思い過ごしでした。RossoもBlu同様、とても楽しめました。

Rossoでは、主人公あおいの新しい恋人・マーヴとの日常シーンが多く、経済的に余裕のある暮らしの中で、あおいに注がれるマーヴの愛情がたっぷりと描かれています。あおいは素敵な恋人を見つけられて良かったねぇ、と思っていたのですが…

・・・ちなみに、Bluの感想はこちら ↓↓↓ です・・・


恋人同士だった頃、何気ない会話の中で交わした約束。

ある日突然、嫁さんに「あの日の約束覚えてる?」と聞かれたら...…
oh~、考えるだけでもなんと恐ろしい事でしょう。

はい~? あ~、あぁ~、はいはいはいぃ~、
あ~、はいはい~、あの~ねぇ~、約束ねぇ~。
はいはいはいぃ~… … … はい??

目が泳ぎ過ぎて、黒目が目玉の裏側に隠れてしまいますね。


この小説Rossoの主人公・あおい、そしてBluの主人公・順正じゅんせいは目が泳ぐ事はなく、ともにその約束をしっかりと覚えていました。
覚えていたというより、その約束と共に生きている、といった方が良いかも知れません。

これだけ聞けば、なんと素晴らしいふたりなのだろう。と思えるのですが、残念ながらそうではありません。
ふたりは何年も前に別れており、現在は結婚こそしていませんが、ともに新しい恋人がいる身なのです。

これは...… ダメ。 でしょ?

そしてどちらの新ペアも、最終的には別れる事になります。
そりゃそうですよ。

自分の恋人が昔の恋人の事をグジグジと気にし続けているとしたら…
そんなのはキッツイです。
いい加減にしろ~っ、ってなりますわね、普通は。


ふたりが交わした約束とは「あおいの30歳の誕生日に、フィレンツェのドゥオモの上で会おう」というものでした。

この作品は、ふたりの新しい恋人(順正の新恋人は芽実、あおいの新恋人はマーヴ)の立場で読んでしまうと、本質を見失ってしまうと思いました。
新しい恋人にしてみれば、ただの浮気ですから。

ですので、この作品は「愛の本質」に主点を置くと楽しめると思います。

愛の本質は、愛し合ったふたりの中だけに存在するもの。

私はその様に解釈して、この作品を楽しませていただきました。

実際、そうですしね。

ふたりの愛の深さも、ふたりの間に起こった出来事も、想い出の場所も、絵も、音楽も、匂いも、なにもかもが、ふたりだけのものなのですから。

それで良いと思います。


そもそもふたりが別れる事になったのは、とある「思いがけない出来事」が原因でした。相手への不満が積もり積もって、という事ではなかったのです。

人生経験を積んでいれば冷静に対処できたのでしょうが、残念ながらその時のふたりは若すぎました。

お互いに、自分の想いを正しく相手に伝えるチカラを持っていなかったのです。

そして「後悔を抱いたまま」、ふたりは別々の人生へと歩みを進めてしまいました。

特に順正はその出来事の直接的な原因を追究しないままに、あおいを追い出してしまいました。自分の側に原因があったという真実を知った順正の後悔の大きさは相当なものでした。

約束の地で再会を果たした事で、ふたりが後悔することなく、この先の人生を送る事ができるのならば、それで良いのではないのでしょうか。


そしてマーヴと芽実もまた、それぞれに後悔を抱えて生きる事になります。
マーヴはあおいを、芽実は順正を、本当に愛していました。
相手の気持ちを自分に向け切る事が出来なかった事の悔しさが残ったままだと思います。この二人の幸せを願わずにはいられません。

それぞれの立場で、自分の気持ちを整理しながら生きて行くしかないのですね。

そんな気がしました。

ひとつだけ気になるのは、再会したふたりが最後の最後で「真実を隠したままでいる」という事です。

Rossoの中で、その理由をあおいは、分からないとしています。

Bluの中で、順正はあおいへの対抗意識としています。

その意味を読み解く事ができませんでした。

この点について映画で明かされているのかどうか分かりませんが、気が向いたら映画も見てみたいと思います。


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