昨年から2冊(正確には3冊)の本を出版したが、出版業界の酷さに驚いている。
本とお金のルートは、
■本
印刷会社→出版社→取次→本屋、Amazonなど通販業者→消費者
■お金
消費者→本屋、Amazonなど通販業者→取次→出版社→印刷会社
となっている。
Wikipediaによれば、取次には大きい方から日販、トーハン、楽天ブックスなど19社がある。
日販とトーハンでシェアの70%以上を占める。
(2019年9月時点)
ところが取次からお金が出版社に中々入らないらしい。
色々と調べてみると、以下が出版業界の実態のようだ。
確かに、あまり売れていない本であれば金額が小さいので振込手数料を節約するために何か月かまとめて払うのは合理的だが、1年経っても払われないのは異常だし、小さな出版社にとってはいじめのようなものだ。
出版社は印刷した本の納品から2か月以内(月末締め、翌々月払い)に印刷会社に代金を支払う必要がある。
さらに、大きな出版社であれば社内のデザイナーや編集者に給料を、小さな出版社であれば外注のデザイナーや編集者などに業務委託費を払わなければならないので、取次からお金が入らないのでは資金繰りが厳しいのは当たり前だ。売上の小さい、資金力のない出版社なら、倒産しない方が不思議なくらいだ。
私のような著者にも印税を支払わなければいけないが、取次からの入金がなければ払いようがない。
出版時の著者の負担がなければまだいいが、著者も負担している場合は著者も被害を被ることになる。
取次は本の販売価格の20%程度も中抜きしておきながら、これだけの期間お金を入れてこないのは酷い話だと思わざるを得ない。
もう1つ、出版社に取次からお金が入ってきても、どの本が何冊売れたのか内訳を教えてくれないそうだ!
どうやって著者に配分しろと言うのだろう?
無茶苦茶な話だ。
これに関する実態は以下のようなことらしい。
書店で本が売れた際にコンピューターに入力するはずだからどの本が何冊売れたかの完璧なデータがあると思うのだが。
元カメラ開発者の私から見たら、信じられないほど杜撰な業界だ。「言い訳はいいから本の売上数の実態把握をさっさとできるようにしろ!」と思ってしまう。
問題の原因は?
取次から出版社に中々お金が入ってこない一因に、再販制度があるようだ。
これは、取次も書店も買取ではなく、委託販売のような形態になっており、売れた分だけお金を払い、売れ残ったら返品できる仕組みだ。
そのために必然的に取次や出版社にお金が入る時期が遅くなる。買い取りであれば、納品した月の月末締めの2か月後には振り込まれるはずだ。
再版制度は書籍ごとの販売数の把握が難しい原因にもなっているようだ。
再販制度の問題点に関する記事を探したところ、以下のものがあった。
公正取引委員会が問題にして議論を行なっていたのだ。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jshuppan/32/0/32_161/_pdf
(PDFにはハイパーリンクが付かないようだ)
しかし、この中で支払いの問題については全く触れられていなかった。
なぜだろう?
出版業界の歴史
Wikipediaによれば出版業界の歴史は以下のようになっている。
まとめ
お金を出版社に入れない取次だけが悪いのではなく、取次にも書店からお金が入ってこないのがそもそもの問題なのだろう。
諸悪の根源である再販制度を見直さないと、紙の本は日本から消えてしまうかもしない。
大量生産の時代は終わっているので、取次も書店も、大量生産の時代に作られた、無責任な再版制度はやめて、買い取り制にすべきではないだろうか?
詳細の分析を行なった訳では無いので正解は分からないが、再販制度に答えがないことだけは間違いないだろう。少なくとも著者である私はそう思っている。現状のままでは本を出し続けることは難しい。
以下の記事は私の意見と近いようで、私の考えはピント外れではなさそうだ。
一方、出版社の話では、再版制度を廃止すると以下のようになりそうだとのことだ。
日本において唯一検閲から自由な言論空間として、出版業界が一刻も早く、まともな姿になることを願う。