小説を書くのにつまずいたら手に取るべし。『アウトラインから書く小説再入門』
ふと小説のアイデアが浮かんだとしましょう。
書く前から「これ、いけるんじゃないか」という手ごたえを感じます。
それはベストセラーのチャンスかもしれません。
ぜひ実際に書き始めてみてください。
決して意地悪を言いたいわけではないのですが、きっとどこかで筆が止まってしまい、進まなくなるのではないでしょうか。
◎ワンアイデアだけで小説は書けない
実際、この記事でも記しましたが、小説のアイデアが思い付いても形にするのは難しいものです。
それは、ちょっとしたアイデアだけで手に負えるものではないからです。
はっきり言ってしまいます。
小説はワンアイデアで書けるものではありません。
でも、そのワンアイデアが素晴らしい小説を生み出す原動力になる可能性は大いにあります。
要はどうやって形にするかなのです。
即興で思い付いたままに書くことを「パンツァー」「パンツィング」といいます。
計画を立てずに勘を頼りに執筆をしていくわけです。
これはスティーヴン・キングのような一部のプロフェッショナルのなせる業といっていいでしょう。
自分も含めふつうの人は、この方法で小説を完成まで導くことは難しいものです。
数千字の超短編なら書けるかもしれませんが、一般的には4万字書いてようやく一冊の単行本になると聞きました。
(違ったらごめんなさい)
これだけの文量を形にするには、途方もない根気と努力と試行錯誤が必要になります。
しかも「パンツィング」「パンツァー」では、書き始めたら後戻りできません。
後戻りしたとしても、また途方もない根気と努力と試行錯誤が必要になってしまいます。
そういう書き方ではなく、最初にアウトライン(ロードマップ)をつくっておき、小説全体を俯瞰しておこうという考え方を論理的に整理してくれたのが、『工学的ストーリー創作入門 売れる物語を書くために必要な6つの作業』という書籍です。
ただ、アウトラインの作成については、以下のような誤解があるようです。
「アウトラインがあると自由な発想で書けなくなるのではないか」
「小説を書くという魅力的な行動が、単にアウトラインをなぞる作業になってしまわないか」
「アウトラインをつくる作業はかえって回り道にならないか」
実は逆なのです。
アウトラインという縛りがあるからこそ、書き手はその中で自由に泳ぐことができます。
いきなり小説という大海原に飛び出すのではなく、まずは東京湾、相模湾、駿河湾……と一つひとつシーンを固めておき、その結果として太平洋までたどり着けるようになるというわけです。
……変なたとえになってしまいました(無視してけっこうです)。
もしアウトラインが自由な発想を奪うなら、それこそ「パンツィング」「パンツァー」という書き方に戻って取り組めばよいだけの話です。
◎アウトラインから書くということは
先ほど紹介した著書『工学的ストーリー創作入門』では、事前に6つの要素「コンセプト」「人物」「テーマ」「構成」「シーンの展開」「文体」から定めるとよいとされていました。
その考え方には心から賛同しますが、「構成」に大きくページが割かれており、残念ながら私にはやや合いませんでした。
自分は「構成」の手前でつまずいていたので。
ワンアイデアがあっても、ひとつの小説として形にするには複数のシーンを組み合わせる必要があります。
その数々のシーンが私には思いつかず、構成づくりに取り組んでみたものの、あまり考えがまとまらなかったのです。
「構成」以前の問題だったのでしょう。
そこで手に取ったのが『アウトラインから書く小説再入門 なぜ、自由に書いたら行き詰まるのか?』という書籍です。
趣旨は『工学的ストーリー創作入門』と大きく変わりません。
「パンツァー」「パンツィング」ではなく「アウトライン」(ロードマップ)から作成していこうという話です。
ただし「全体の下書き(ゼネラル・スケッチ)」や「人物像の下書き(キャラクター・スケッチ)」の解説に重きが置かれています。
「全体の下書き(ゼネラル・スケッチ)」では、「動機、欲望、ゴール、葛藤、テーマ」を意識することが大事だと説いています。
これらが各シーンとなって物語を回していくわけですが、この点が丁寧に解説されていて参考になりました。
何よりもよかったのが、「人物像の下書き(キャラクター・スケッチ)」について紹介されていたノウハウです。
キャラクター像を構築する際に、インタビュー形式で登場人物に問いかけたり、エニアグラムというチャートで登場人物の性格のバランスを取ったりする手法が新鮮でした。
◎まとめ:小説を書くならアウトラインが必要
個人的に私は『アウトラインから書く小説再入門』から読み始めるといいように思いましたが、ネットの書評では逆のことが書かれていたりしたので、このあたりは皆さんの事情によるところが大きいのでしょう。
ただ一つ、間違いなく言えるのは「小説を書くならアウトラインが必要ではないか」ということです。
もし「パンツァー」「パンツィング」での執筆に行き詰ったら、今回紹介した本を手にしてみるのも悪くないでしょう。
小説を書く大きな推進力になってくれると思います。
皆さんの検討を祈ります!
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。