独り者に読んでほしいイチオシ本 津野海太郎『歩くひとりもの』
6月も終わりですね。
そろそろ読書録も載せていかなければ、と思いつつ、なんとなく過ごしまっていた自分を反省する反面、わりとのんびりもしています。
今回は津野海太郎さんの『歩くひとりもの』について書こうと思います。
津野さんは福岡県出身、1938年生まれで現在83歳の演出家・編集者・評論家。1965年に出版社・晶文社に入社し、併行して劇団「黒テント」の演出家として活躍。エンジニアにとっては『季刊・本とコンピュータ』の編集長、といえば「!」となるかも。
最近はあまり話題には上がらなくなったなぁ。元気ならうれしいけれど。
内容を一言でいうと、津野さんが47歳の時に「ひとりもの」で生きてくことを意識した人生を軽いタッチでつらつら綴るエッセイ集です。
「ひとりもん」道をまっしぐらに、現在進行形で時を刻む50代の心に突き刺さるものはあるかもしれないと、古本で200円ぐらいで買いました笑。
冒頭の「自分用応援歌」の章では、エリック・ホッファーの『波止場日記』とヘンリー・デヴィッド・ソローの『ウォールデン 森の生活』の対比がなんとも言えない感じがしました。
ホッファーは失明(その後回復)したり、学校教育を一切受けなかったりした苦労人哲学者として活動しました。
主にサンフランシスコで港湾労働者として働き、底辺生活者鵜を続けつつ、図書館で独学し、『波止場日記』など数々の著作を遺しています。
ソローは、「不服従の人」であり、その思想はガンディー、マーティン・ルーサー・キング牧師、ネルソン・マンデラらに受け継がれた点ではビッグ・ネームで、わりと知られている人です。
さて、津野海太郎に話を戻すと、二人の対比に着目しています。
ソロー:「人間は自然である」
ホッファー:「人間は反自然である」
うーん、いきなり対立してますねぇ。
津野さんはホッファー的な、肉体労働の日々の経験が割とお好きなよう。
さらに、この本の中で、津野さんは「言葉」も拾っています。
こんな読書法もあるのか! と感心しました。
お人柄が滲み出る文章ですね。
おひとりさま中年男の日常あるあるエピソードに触れ、新しい視座を手に入れた気がします。
「ひとりもの」の生態を知るにはちょうどよいエッセイ本なので、気になった方は一読してみてください!