【シン・柔道整復学 奏論】講義7.DNAの転写とRNA
第6回の講義では、DNAの構造の中には塩基というものがあって、それが配列をなしているんだということを話してきました。
それがピンとこない方は、前の記事をさかのぼって読んでみてください。
その塩基配列を持った鎖が2本集まって螺旋状になっているので、「DNAは二重らせん構造をしている」とよく言うのですね。
今回は、そのDNAからどうやってタンパク質が合成されるのか、その過程を説明していくステップにいよいよ入っていきます。
いよいよ私たち柔整師の領域に少し近づいてまいりました。
当然ですが、柔整師は外科的手法を用いずに組織の修復が狂わないよう誘導するのが仕事です。
そして、その分野は「外力を受けた運動器」というわけですから、なんともまぁ広いわけです。
しかし、ヒトの体の乾燥重量におけるタンパク質の割合は約20〜25%でして、我々が扱う筋骨格系はその中心ですので、基本的な体の仕組みを知っていれば何か共通項が見えてくるはずです。
そうすれば、「この固定方法がいいらしいよ」とか「体外衝撃波が最新だぜ!」みたいなどうでもいい情報に惑わされずに済み、どんなに分野が広くてもある程度情報を俯瞰して見た上で治療に臨むことができます。
これが基礎的な分野を学ぶ利点です。
私も5年目の頃なんかは「うぉー!徒手整復も上手くできねえのに分子なんか知るかぁ!!!」と思っていました。(今もそう思ってる節はあります。)
ただ、「大きく道を逸れない」ためのセーフティラインを設けるにはやはり基礎が必要で、そのために国試があるわけです。
じゃあ受験終わったら勉強はおしまいかと言われたら、きっとそうじゃないので私がケガベヤを始めたと。
そういった流れになっております。笑
メンバーシップという形を取ったのも、何かこう「共同で」コミュニケーションを取りながらやっていければ私もモチベーションが続くかなと思ったからです。
さて、本題にいきましょう!
タンパク質合成の流れ
まずはさっくり流れを理解しましょう。
DNAを元にRNAというものが合成されて、それを解読しアミノ酸の連なったタンパク質が合成されます。
今日はこの転写(=RNA合成)について解説したいと思います。
今もあなたの体で常にこの転写は行われていますよ!
ロビンがリオポーネグリフの写しをこっそり持っていましたが、タンパク質合成の第1歩目もそれと同じことから始まります。
転写とRNA合成
DNAの一部をコピーしてRNAを作る過程を転写と言います。
英語で言うと、「トランスクリプション」です。カッコつけたい時や海外で研究する時はこっちで言いましょう。
これを順を追って説明しますね。
転写の開始
まず、特定のDNA領域に「プロモーター」と呼ばれるシーケンスがあります。
このプロモーターは、RNAポリメラーゼという酵素が結合するスタート地点となります。
RNAポリメラーゼは、①DNAの2本鎖をほどき、②RNAをつくる、という働きがあります。
RNAポリメラーゼは酵素の一つで、これ自体もタンパク質です。
このRNAポリメラーゼがDNAのプロモーターに結合した後、DNAを局所的に「開く」ことで、一方のDNA鎖がテンプレートとして使えるようにします。
プロモーターを目指してRNAポリメラーゼがくっついて、まずはDNAの二重らせんの一部をほどくということです。
この「ほどかれる」動きを展開と言ったりします。
DNAがほどけたら、そこにリボヌクレオチド三リン酸(リボトリフォスフェート、NTP)を材料として持ってきて、RNAを形成します。
このRNAができる過程を、そのまま合成と言います。
なので教科書的には、「転写(DNAからRNAを合成する過程)」は開始→展開→合成と書かれる場合が多いです。そのままですね。
合成の過程では、DNAの塩基配列に対して対応する塩基を持ってきてRNAを合成します。
DNAの塩基に対して新しい塩基を持ってくるのですが、DNAのアデニン(A)はRNAのウラシル(U)に、シトシン(C)はグアニン(G)に、グアニン(G)はシトシン(C)に、そしてチミン(T)はアデニン(A)に対応します。
こうやって転写が起こっていくのです。
転写の特徴と意味
ここまでで説明した「転写」、つまりRNAの合成には実はもっと驚くべき特徴があります。
方向性がある
さっきの図にも「3'」とか「5'」と書かれていましたが、DNAやRNAには末端に特徴が仕込まれています。
それを「3'末端」とか「5'末端」と呼ぶのですが、RNAポリメラーゼは、一般的にDNAの3'から5'方向に沿って動き、新しいRNAは5'から3'の方向に合成されます。
このことに意味があるのかは分かりませんが、RNAポリメラーゼはDNAの複数箇所で同時に多くが働き出すので、動く方向を決めておかないとぶつかって事故る可能性はありそうですよね。
こういった細かなルールが転写の容易性と効率化、確実性を担保しているのだと思います。
スプライシング
DNAの塩基配列を写し取るという話をしてきましたが、全部を写し取るわけではありません。
正確に言うと、全部を一度写し取るんですが、後でカットされる部分があります。
ぜーんぶ写し取ったものを「前駆体mRNA(プレ-mRNA)」と言い、そこからトリミングされたものがRNAとして活用されるわけです。
この、最終的に残る領域を「エキソン」、カットされる領域を「イントロン」と言います。
大事な塩基配列だけギュッとRNAにするんですね。
このようにイントロン部分を取り除くことを、スプライシングと言います。
RNAの種類
ここまでRNA、RNA、RNA、、、と言ってきましたが、このRNA(リボ核酸)にも実はいくつか種類があります。
ここではまずざっとご紹介しますね。
ここで大事なのは、全部覚える必要は全くないということです。(最初の3つは知っておく必要があるけど、この記事では最初1つだけ知っておけばいいよん。)
まず、「へぇ、いっぱいあるんだ〜」と思ってください。
メッセンジャーRNA(mRNA):DNAからの情報をリボソームへ運び、タンパク質合成(翻訳)に用いられます。
リボソームRNA(rRNA):リボソームの主要な構成成分であり、タンパク質の合成に関与します。
トランスファーRNA(tRNA):アミノ酸をリボソームへ運び、mRNAにコードされた情報に基づいてタンパク質を合成します。
小型核RNA(snRNA):主にスプライシングと呼ばれるRNA修正プロセスに関与します。
マイクロRNA(miRNA)、小型干渉RNA(siRNA):遺伝子の発現を調節する役割があります。miRNAは通常、特定のmRNAを認識して翻訳を抑制します。siRNAは特定のmRNAを分解します。
長鎖非コーディングRNA(lncRNA):遺伝子の発現を調節したり、染色体の構造に影響を与えたりします。
環状RNA(circRNA):線状のRNAとは異なり、末端が閉じた構造をしており、主に遺伝子の発現調節に関与します。
ピワイRNA(piRNA):生殖細胞においてトランスポゾンと呼ばれるジャンピングジーンの活動を制御します。
ガイドRNA(gRNA):CRISPR-Cas9などのゲノム編集技術で用いられ、特定のDNAシーケンスを認識します。
とまぁ、いっぱい種類があるわけです。
ただ、今回話したタンパク質合成のコード(暗号)を記す目的があるRNAは、mRNAのことなので、それだけ押さえておけば問題ありません。
「メッセンジャーRNA」と言うくらいですから、タンパク質合成へのメッセージを運ぶRNAなんですね。
さて、ちょっと難しい内容でしたでしょうか。でも、意外とサクッと読めたでしょ?(押し付け)
やっとDNAからRNAが作られましたね。ビックバンのことを話していたのが懐かしいです。笑
次はようやく、タンパク質の合成のはなしですかね〜!
↓第8回の講義はこちら
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