ハチミツって、売れるの?(蜂蜜の販売について①)

 日本ミツバチを飼育し始めて、2年くらい経った頃。半年間西洋ミツバチについて教わりました。あるとき、補助をしている農学校の先生がふと呟きました。

「蜂蜜って、売れないんだよなぁ。」

 売れなくて困るなんてことあるのって思いますか、それとも売るのは大変って思いますか?

 さて、ご自身でハチミツを収穫したとして、例えば一年で100キロ。売り切る自信ありますか?200グラムの瓶で500本です。金額は、分かりやすくして1グラム5円。一本千円。売り切ると50万円です。(スーパーの蜂蜜は1グラム1円~2円くらいです。)

 自分だったら、一年間切らさないように売りすぎを注意します。つまり、それくらいなら売るのに困りません。

 でも、売れないひとは一本も売れないそうです。何故なのでしょう?

 話は一旦それますが、新規就農を目指すひとが何を作付けすべきかと言う講義を受けたことがあります。考えてみてください。自分なら何を作りますか?

 大体、次の3つを作りたいと思うひとが多いそうです。

①(糖度の高い)フルーツトマト

②苺

③米

 トマトと苺は、本人が感動した食べ物です。単価も高いです。「甘いでしょ?みんな美味しいって言ってくれるんです。」って、言ってバイヤーである講師に就農者が持ってくるそうです。「タダでもらったら、誰でも美味しいって言うでしょ?具体的に数値でどれくらい他より甘いんですか?」と聞かれて答えられなければ買ってもらえません。イチゴもトマトも市場は飽和状態で、明らかな違いがなければ買ってもらえないのです。

 お米ですが、公的な学校に行くとよく「米」の栽培を進められるそうです。でも、米は余っていますよね。農協に買いとってはもらえますが、値段は高くありません。

 話を戻して、ハチミツはどうでしょう?お米のように買いとってもらえるところに出荷できますが、もちろん、同様に買い叩かれます。1グラム5円で売ることは出来ません。でも、トマトや苺のように市場は飽和状態ではありません。日本で流通している国産蜂蜜は全体の流通量の1割以下。少ないです。更にその中で他の蜂蜜と差別化できるのであれば、希少な蜂蜜になります。単価ですが、銀座のハチミツは、今確認したところ1グラム40円以上でした。1グラム5円の単価は、スーパーのハチミツの5倍でも銀座のハチミツに比べたら八分の一以下。どちらも売れていることを考えるとブランディング次第で蜂蜜は単価の上下の余地がかなり大きいのです。

 問題は、誰にいくらで売るかです。それによって、単価や売り方が変わってきます。自分の場合、以下のように考えて販売しています。

方針①ハチミツを毎日食べているようなハチミツマニアの人にリピートしてもらう。

方針②ハチミツマニア以外のハチミツに興味がある人には、違いを体験してもらいつつ、売れなくても構わない。

方針③付き合いでお願いして買ってもらうことは、絶対にしない。

 ハチミツマニアの方は、大体1ヶ月500グラム以上蜂蜜を消費します。知り合いの方の分のもたくさん買ってかれるので是非リピーターになって頂きたいです。

 では、何故個人の養蜂家からハチミツをたくさん買うのでしょうか?実は、ハチミツ好きな人ほど売っているハチミツを信じていません。よく目にする大手の養蜂場さんですが、すべて自社で生産していると思いますか?一ヵ所で採れるハチミツの総量は決まっているのです。とてもまかないきれず、養蜂家から大量に仕入れています。では、仕入れたハチミツの生産過程をすべて把握しているかと言えば、もちろんできません。

 ハチミツは、ずるが簡単に出来てしまう商品です。加熱したり(非加熱と偽ったり)、外国産ハチミツを混ぜたり、ハチミツでないものを混入したり…。ハチミツマニアの方ほどそういう事情をよくよくご存知です。だから、第一声は、「これ本物?」です。

 したがって、“絶対にずるはしない!”が個人で販売するひとの絶対条件だと考えています。少しでもずるをしたと思われたら、今後買ってもらえなくなります。

 主にマルシェになりますが、ハチミツマニア以外の方に売る場合は、美味しさ、驚き(発見)、楽しさを体験してもらえば、買ってもらえるかどうかは問題にしてません。

 ハチミツをマルシェで売っていると、基本的に少しは興味があるひと以外は素通りされます。

 この間マルシェに出店した時に一時間以上誰も立ち止まってもらえませんでした。次に味見してもらったグループにそのことを伝えたら「こんなに美味しいのにー!!」ってびっくりされました。でも、その人が誰かにいろんな味のハチミツがあることの驚きと美味しさを伝えてもらえたら、これ以上の広告はありません。売れるかどうかは問題ではありません。

 売れなかったらどうする?と思うかもしれませんが、どこにでもハチミツ好きはいるものでそれなりにきちんと売れますし、長く続けるとリピーターの方の分で売上も上がっていきます。

 大事なのは、一般的なハチミツと違う味のハチミツを複数用意することです。それが驚きに繋がるのですが、どうするのかは、また、別に話をしたいと思います。

 最後に、目先の利益にこだわって、ハチミツを無理に買ってもらうのは最悪です。みなさんのうちにはいつまでもなくならないハチミツが何年も棚に放置されてませんか?蜂蜜は、腐らないのでずっと捨てられず残ることになります。付き合いで買った人は、スーパーよりかなり高いけど一度ならと思って買われるでしょう。いつまでも、高いとネガティブに思われつつ棚に残っているハチミツは「知り合いから買ったけど、高かったんだよね~。」と言うネガティブキャンペーンがハチミツがなくなるまで繰り返されることになります。腐らず、食べず、なので延々と続くのです。恐怖でしかありません。

 ひとまずここまでとさせて頂きますが、こんなことを思いながらハチミツを売っています。みなさんなら、どんな風に考えてハチミツを売りますか?

次の記事は、ハチミツの販売時によく聞かれる質問に対する自分の回答について書いています。
ハチミツってどう食べるの?(蜂蜜の販売について②)

読んだ感想などコメントを書いて頂けたら、はげみになります。 ハチミツは、お仕事依頼の記事にネットオーダーのページへのリンクがあります。購入希望の方はそちらからお願い致します。