弱り目に祟り目、欲目で裏目に。目先の利益にとらわれて…。(養蜂のコツ②)

 前回の記事はこちらから。
ハチミツをたくさんとるには?(養蜂のコツ①)

よくこんな事が言われます。

「子供の頃、虫を飼ってなかった人は欲をだして(養蜂に)失敗しがち。」

 養蜂は初期投資が少なくてすみ副業によいとか、ハチミツは単価が高いのできっと儲かるとか、そんなイメージで養蜂を始めた人は蜂にとって必要なハチミツまで我慢できずに絞ってしまいます。前述のフレーズは、そんな人は子供の頃虫を飼っていない人が多いのではと言う一種の偏見で根拠はありません。でも、これはハチミツの取り分を「ミツバチの残りを人間がもらう。」のか「人間の残りで蜂が生きていくのか。」のか、そのスタンスに繋がります。後者の人は、「ハチミツ=お金」のイメージが強すぎて少しでも蜜が貯まるとハチミツを絞ってしまうのです。でも、もともとハチミツは蜜蜂にとっての食料で、花の少ない夏や活発に活動できない冬に、貯めたハチミツを蜜蜂たちが消費しながら乗り越えていく為のものです。また、蜜蜂を従業員、養蜂家を経営者に例えるなら、儲けを全て搾取し従業員にまったく還元しない経営者と言うところでしょうか。ひどいブラック企業ですね。

 では、ハチミツを絞りすぎて巣の中のハチミツが少なくなってしまったらどうなるのでしょう。

 まず、蜜蜂は育児を停止し、産卵をストップします。それでも、残っているハチミツの量が少なければ、更に育児中の幼虫や蛹も捨てます。育児はハチミツを大量に消費する活動です。幼虫は生産活動をせずにハチミツを消費する存在ですし、蛹が死なないように通常より10度以上体温を高くして暖める為にもハチミツを余計に消費します。したがって、これらの活動を停止し群の存続を優先するのです。それでも、足りなければ餓死で死んでゆきますし、働き蜂の暖かい時期の寿命は1ヶ月程度なので、やはりだんだん蜂数が減っていきます。

 周りに(流蜜する)花がたくさん咲いているなら問題ありません。蜂がどんどん蜜を集めてきます。でも、花が咲いていなければ前述の通り蜂数が減っていきます。

 ハチミツや蜂数が減ると、掃除が行き届かなくなったり、適切な体温が保てなくなり病気にかかりやすくなります。蜜蜂の病気には、群が全滅してしまうようなものがいくつかあります。これらの病気は偶然かかると言うよりは、既に保菌しているが健康なので発症していないと言う状況の方が多いようです。なので、群勢が弱くなると発症してしまう可能性が高くなってしまうのです。特定伝染病なら発症した群は家畜衛生保健所に届け出した上で焼却処分ですし、放置すると他の群や他の蜂場の群もどんどん発症してしまうことになります。

 また、ダニについても同様です。ミツバチが減ってもダニは減りません。相対的にダニの密度が高まり、蜂が対処できるダニの数を超えると健康な働き蜂が産まれなくなり群が全滅に向かってゆきます。

 外敵。例えば、スズメバチにも対処できなくなり殺されて全滅してしまったり、ハチノスツヅリガの幼虫に巣をボロボロにされたりします。

 つまり、群が小さくなると良くないことがどんどんと起こってくるのです。次々と起こる問題に振り回されることになり、ハチミツどころではなくなります。

 そんな状況になってから、元に戻そうとしても大変です。以前お話した通り蜂数が少ないと全然ハチミツを集められません。放っておくと冬を越すための蜜を集められずに全滅ですし、蜂数を増やそうにもこれも以前お話した通り蜂数が少ないとなかなか増えないのです。

 こんな状況にしない為にも蜂に必要なハチミツを残した上で残りが人間の取り分だと言う意識が大切です。じゃあ、どれくらい残せばよいのかわからないと言う初心者の人は次の春まで蜜を残して余ったのを採ればよいのです。ハチミツは腐らないので急ぐ必要はないのですから。

次回の養蜂のコツの記事はこちら。
働き蜂の寿命から考える(養蜂のコツ③)

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