女王と言われても、偉くはなくて。(蜜蜂の生態①)

 ミツバチの巣箱一つに女王蜂は、何匹いるのか?

 よく聞かれるのですが、一匹です。

 でも、蜜蜂は数千~数万の蜂のコロニーで生活してます。女王蜂一匹と共に大多数の働き蜂が働いていて、更に、少しの雄蜂が寄生して群を保っています。働き蜂と雄蜂は女王蜂から産まれた子供です。

 “女王蜂”と言うのは、人間が勝手に名付けたのですが、実際はそんなに偉くありません。

 蜜蜂は、社会的な生き物ですが、群れの大事な決定は全て働き蜂が行っているからです。

 女王蜂は、群に一匹と言いましたが、女王蜂の能力が群の良し悪しを決定します。やっぱり、女王蜂が要じゃないかと言われそうですが、群れの蜂はすべて女王蜂の子どもです。素晴らしい女王蜂であれば、たくさんの働き蜂を産んで、結果として大群を保ち、たくさんのハチミツを生産します。また、産まれてくる働き蜂も病気やダニに強く健康です。しかし、人間と同様に女王蜂も年月が過ぎれば衰えてきます。産卵力も弱まり、女王蜂であると言う主張でもある女王蜂のフェロモンが弱くなります。

 すると、働き蜂が女王蜂を追い出すか、囲んで殺してしまうのです。

 世間では、女王蜂が威厳があるように見える画像がよく養蜂や生物の本に載っています。でも、実際はかなり状況が違います。女王蜂を働き蜂が少し距離をとってぐるっと女王蜂の方を向いて、360度取り囲み女王蜂にかしずいているように見えることからこの女王蜂の周りの働き蜂達をロイヤルコートと言ったりします。王の護衛団と言うわけです。蜜蜂を飼いはじめて何年もこの状態を見ることはなかったのですが、ついに去年見ました。

 それは、女王蜂がいなくなった群に新しい女王蜂を導入しようとした時のことです。新しい女王蜂をそのまま別の箱に導入すると匂いが違う為、お団子状に働き蜂に包まれてすぐ殺されてしまいます。なので、一般的には蜂が入ってこれないように籠(かご)にいれて4日程度匂いをなじませてから女王蜂を解放します。ですが、大丈夫そうだったので、少し早く女王蜂を解放しました。翌日確認したときに見たのが前述の状況と言う訳です。その時に女王蜂が、盛んにお尻をくいっとふっていました。同じ仕草を大スズメバチ蜂で見たことがあります。ミツバチの巣箱の前でくいっとお尻をふって、匂いを振り撒き大スズメバチの仲間を呼び寄せている時の仕草です。

 つまり、ミツバチの女王蜂は産まれて間もなく女王蜂フェロモンの分泌が弱く、盛んに匂いを振り撒くことで女王蜂であることをアピールしていると考えました。周りの働き蜂は、女王蜂を守っているのではなくお団子状に取り囲み女王蜂を殺す一歩手前と言う訳です。ロイヤルコートどころか裁判官か死刑執行人と言った感じです。まとめると女王蜂を生かすも殺すも働き蜂が判断していると言うことです。

 話を変えて、蜜蜂の群れの重要な行動に巣別れ(分蜂)があります。この分蜂が行われる順序は以下の通りです。

 ①新女王蜂の養育

 ②分蜂の決定

 ③新しい住みかの探索

 ④新しい住みかの選定

 ⑤分蜂

 巣別れするときには、元の巣には新女王蜂が産まれます。その新女王が羽化する少し前に、巣の働き蜂の一部と共に現女王が飛び立つのです。女王蜂が気分で新女王蜂を産むのか?違います。働き蜂も女王蜂も元は同じメスの蜂の卵です。働き蜂が新女王を作ろうと決定し、女王蜂用の巣穴を用意し、女王蜂に卵を産ませ、育てるのです。新しい住みかも働き蜂の合議で決定します。いくつもの候補地の中から住み心地や周辺環境が良さそうな場所をお互いに確認し、より多くの働き蜂が支持した場所が選ばれます。選ばれる場所では、初めは一匹の蜂が出入りしているだけですが、どんどん蜂が増えてきて最終的には大群でやってきます。

 いよいよ飛び立つとなると働き蜂が巣の全体に合図して知らせます。女王蜂は働き蜂に追い出されるように追い立てられてしぶしぶ最後に飛び立ち分蜂するのです。

 ミツバチは、重要な決定を合議でやっている。その事をミツバチの会議と言っている人もいます。女王蜂は、その決定に従っているだけなのです。

女王蜂のイメージ、変わりました?

次の記事はミツバチのオスの悲しい扱いについてです。
ダメ男は最後にポイされる(蜜蜂の生態②)

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