自損事故の処理を手伝ったとき一番怖い思いをしたことは
数ケ月前のこと。
子どもと散歩をしている私たちの横で、偶然、一台の車が自損事故を起こしました。(たぶんわき見運転か何かで、他に被害者がいたわけではなかったのが不幸中の幸い)
事故と言うだけでも怖いのですが、その車は事故の反動でハンドルを思い切り反対に切ってしまい、あろうことか道路から河川敷へ落ちそうになったんです。
高い堤防敷から法面(斜めの面)へ車体が半分ずり落ちたところで奇跡的に留まったんですが、ちょっと衝撃を与えたらそのまま車がゴロンゴロンと転落するのでは、と言うような角度。角度的に、運転席からは車が浮いているように感じたのではないかと思います。
第一発見者、というかその場に居合わせた者の宿命として、私はすぐに110番通報。子供には、すぐ横にあった学校から男の先生を呼んでくるように指示して、車の中を窺い見ます。
運転手は女性。後部座席にはチャイルドシートをきちんと着用している2人の子供が。
大きく傾いたままの車、果たしてドアを開けて助けだしていいものか。しかし助け出さないと最悪の事態になりかねない。
警察への電話をしながら、しかし、怖くて車に触れずにいました。
結果的に、車は転げ落ちることなく、やってきた男性たちの手によって子供も女性ドライバーも無事に救出されました。
時を同じくして警察もやってきて、ほっとしたのも束の間。
そこで、私は恐ろしいものを見ました。
付近を走る車の助手席から、無数のスマホカメラがこちらを撮影しているのです。
確かにショッキングな光景でしたので、撮影したくなる気持ちは分かるのですが…
事故現場に居合わせて、まるで自分が事故を起こしたかというくらい気が動転していた私には、自分に向けられた(ように感じる)スマホカメラが、まるで人々の断罪の目のように見えました。
私でさえそうでしたから、女性ドライバーにとってどれほど恐怖だっただろうかと思います。(もしくは気が動転していてそんな光景は見えてなかったかもしれませんが、見えてないことを祈るばかりです)
最近、事故現場で撮られた画像が多くネットで拡散されています。
それをもとに事故の分析が進んだり犯人が捕まるケースもあるわけで、一概に悪いこととは思わないのですが…
「他人を勝手に撮って使用することは肖像権の侵害になる」と言うことは知識として知っていても、事故現場だとつい体が先に動いちゃうんですよね。
その画像も、おそらく多くの人がSNSなどにUPしただろうし、友人知人に画像付きで送っているかもしれません。結果、画像は「何かよくわからんけど怖い事故現場の画像」として、運転手の顔写真つきでネットの海を漂います。車のナンバーが映っていたら、個人情報だって判明する可能性が高いわけです。
さらに言うと、その場に居合わせた私の顔も写されてるだろうし、その画像がどこへ漂っていくか分からない。おまけにその現場にいなかった人には「私こそが事故を起こした張本人」みたいに映るかもしれないんですよね…。
なにより恐ろしいのは人間なんだなぁ…と怖くなった出来事でした。