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週末野心_春

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自作エッセイ本『週末野心』 春ー私のまわりのひと
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春

そよ風に吹かれて、桜の花びらが舞う。

空を仰ぐと、葉の間から漏れてくる光がまぶしくて思わず目を細めた。

甘くて柔らかい香りに包まれる。

風になびいた髪が、スカートが、くすぐったい。

あたたかくて、優しい季節。

ひな祭り。こどもの日。家族の季節。

卒業式。入学式。出会いと別れの季節。

「春が来た」という合言葉。

私と、私の周りにいてくれる人たちのお話。

生きるとか死ぬとか

生きるとか死ぬとか

友達は、広く浅く、でもその中で本当に信頼できる人を数人作り、そこだけは狭く深く付き合うタイプの人間だ。だからなのか知らないが、「恋愛すると重そう」とよく言われる。その重いの基準も、なぜネガティブなニュアンスで伝えられるのかもわからないが、それはあながち間違いではないと思う。恋愛関係であれ親友であれ、それはあまり変わらないのだが、大切な人に対してはとことん愛を伝える。「生きていてくれて本当にありがと

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ものさし

ものさし

高校の留学仲間で、ずっと大好きで尊敬している先輩がいる。端的に言うと、自分の芯が尋常じゃないほど強く、周りの人を渦の中に巻き込むのがとても上手で、一度決めたことは必ず達成してしまうような人。周囲の反対を振りきり、学歴よりもやりたいことを優先して進学した彼女は、大学受験後にオーストラリアに旅行したらしい。そこで衝撃を受けたのが、大学名ではなく何をやりたいのかを聞いてくれたこと、彼女を肩書を通してでは

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お兄ちゃん

お兄ちゃん

人と知り合ったばかりの時には大抵兄弟の話になるけれど、私はその類の質問が大の苦手だ。一人っ子ぽいと言われたり、下の子がいそうと言われたり。一人っ子は我儘でマイペース、下がいる人は面倒見がいいしっかり者、みたいな「公式」があって、それに当てはめて楽しむ。この遊び自体に悪いところはないのだが、私は自分の番が回ってくる前に話題が移ることを祈り、極力存在感を消してその場でじっと待つ。

小学生の時は答える

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