創作したいノート3:追放したい人はいるのか論
追放系というジャンルが続々とアニメ化しているので、あれこれ視聴しています。そもそもジャンル自体好きじゃないんで原作までは読んでいませんが、どういう形であれ紹介していただける機会は共有して、やっぱ納得できないなと。
今回は、そこそこのゲーマーとして追放系を考えていこうと思います。いわゆるナーロッパやゲーム風異世界、ステータスの数値が表示される世界をゲームそのものと捉え、必須の人材と追い出しても構わない人材を切り分け、こいつは追放してもいいかな? ってやつをできるだけ具体例には触れずに述べていこうかなと思います。
ゲームでいうと、まずバッファーとサブアタッカーがいらないかな? ってところでしょうか。順番に考えてみましょう。
バフの重要度を判断するには、ステータス値と倍率を考える必要があります。ドラクエシリーズでは、本体ステータスは3ケタが限界で、攻撃力を上げる呪文「バイキルト」の倍率は二倍です。ダメージ計算式は「ダメージ=(攻撃力÷2)-(防御力÷4)」でインフレが起きにくいらしい……いやまあ、あんまし深く理解はできていませんが。
3ケタなら二倍でもオッケー、4ケタ・5ケタになると%強化でないと成立しないかなと。ソシャゲでありがちなのは「使用者本体の攻撃力のn%を対象に上乗せする」みたいなやつですね。この方式がいちばん使用者の実力が乗りやすくて、作劇としてもやりやすいんじゃないかと思います。
いわゆる「パーティー」という戦闘集団は、基本的に人数が少ないので、バフ以外に何ができるかも重要です。バフ以外なんにもできないメンバーはマジでいらないので、バフ専は解雇されるかもしれません。何が言いたいかというと、バッファーはほかに攻撃か回復ができないとお話にならないってことですね。
直近で思いつく、バフがめちゃくちゃ強いゲームだと『崩壊:スターレイル』がありますが、あれはバフ前提のゲームバランス、かつ全員に通常攻撃/スキル/必殺技が用意されてるからああなってる感じ。模擬宇宙ソロも特殊なバフ+範囲攻撃を持ったキャラ、そんでもって運命の反響があることを前提にした縛りプレイなんで、「バフがあるから」一辺倒で説明できるわけではありません。
以上の説明をまとめて「バフ以外に何もできないやつ」はまあ……そりゃ追放されますわ、としか言いようがありませんね。会社の雰囲気をよくしてるけど通常業務はなんにもしてない、なんて社員を雇い続けるかって話。あるいは、補助輪だけで自立して走行できるかって話にも例えられるでしょうか。どっちも成立しないんじゃないですかね。
戦闘というダメージレースにおいては、相手を倒すことに加え、味方が倒れないことも勝利条件です。速攻撃破して誰も倒れないのもアリ、味方が傷ついてもすぐに癒せるから誰も倒れないのもアリですが、そこにワンクッションあると遅延が発生します。「コーヒー飲んでから仕事始めましょう」って言われて、事実として業務効率が上がっても、コーヒーを淹れる時間を始業前に作るかどうかは微妙だと思います。その提案をしてきた人がなんにも仕事できないんならなおさらね。
次に考えるサブアタッカーも、入れ替え要員がいたらすぐ切られると思います。人間関係で見れば、同郷や同期で組んで役割かぶりを起こすかもしれませんが、単にゲームとして性能だけ見れば、より火力の出るアタッカーを採用するのに決まっています。
現実で考えるのはナンセンスなのでめっちゃ単純化すると、攻撃力180と攻撃力140のどっちを使うかですね。攻撃力が高い方、より早く敵を打倒できる方を採用するのが当然の流れでしょう。あとは属性の通り具合とか武器の性能もありますが、ダメージで比べるのが最適でしょうか。よりダメージの出ないものは別方面で役立ってほしいのですが、これが不可能だった場合はいらない子になります。しゃーない。
サブアタッカーという立ち位置を具体的に書いておくと、例えば「盾役・剣士・剣士・術師・術師・治療師」という編成で見たときの二人目の剣士と術師ですね。剣士を剣で戦う人、術師を魔法で戦う人と考えると、同じ役割をふたり配置する意味を問うことになります。ひとりで回せる仕事にふたりを配置するのはただ無駄なだけなので、優秀な方をひとり残す選択肢を取ると思いますね。そうなると、より弱い人員が切られるのはもう仕方がありません。派遣切りとかあるしね、仕方ないね。
現実で例えると、会社の規模で回せる仕事に対して、この部署だけ人が余ってるから仕事が一瞬で終わっちゃってヒマ、みたいなもんでしょうか。現実にはそこそこありそうなのですが、会社全体として業務の回るスピードが違うと、結局誰か抜けることになるんじゃないですかね……。優秀な人が抜けてちょっと低いとこで落ち着くのが現実かなぁ。
逆に切ったらマズいのは、ヒーラーですね。なんか「薬でいいじゃん」「ケガなんてしないから」とかで追放されるお話があるんですが、何言ってんだか分からんね。ケガしに行ってるようなもんなのに「負傷のリスクはない、治療要員はいらない」ってのはちょっと。ナーロッパのギルドは安全基準見直して、どうぞ。
ヒーラーの重要度は、パーティー全体が負う傷の深さと頻度、そしてヒーラーが治療できる傷の深さと治療時間によります。毎回骨折したり腕足がもげるような場所には行くべきではありませんし、害虫駆除のような、本人たちにさしたるリスクのない殺傷だと安全対策も難しくありません。
ダンジョンに潜って受ける傷の種類を考えると、切り傷・刺し傷・打撲と青あざ、このあたりでしょう。これらの傷が全治何週間あるいは何か月か、ヒーラーが治療するとどのくらい期間が縮まるのか・完治するのか、このあたりが気になりますね。アニメでよく見る「ザックリ切った傷がすうっと消えていく」みたいな光景だと、だいたい全治一か月以上、痕も残るであろう傷を数秒で治していることになりますので、あれはぜひ欲しい。
逆に、回復量が低くてかすり傷しか治せないとか、活性化するから血圧が上がって出血がひどくなるとか、そういう理由があるなら「現場での治療」にはあんまし意味がないかなとは思いますね。まず傷を塞ぐ、傷みを取り除く、これができないと継戦能力に大きく響くので、同行する意味が果てしなく薄くなります。継戦能力に大きく響くであろう「道中での負傷をなかったことにできる」「傷の痛みを抱えて行動しなくてもいい」、この二点は非常に重要だと考えます。
薬でいいって言ってるやつは、まあいわゆる「ゲーム脳」ですかね。ちょっと紙でこすって切った程度の傷でも、治るのに三日はかかります。「HPが回復する=傷が治る」って図式をゲームプレイヤーが持つのは問題ありませんが、現実世界で「傷なんか傷テープで何とかなるんだぜ? 包丁で刺されたくらいで救急車なんか呼ばねぇよバカがよw」とかいう発言を聞いたら、正気を疑います。実感を伴わない感覚をもとにした言葉って、嘘くささが増してマジ醒めるよね。
想定として、傷薬の内容物が「治癒を促す物質+栄養補填」だった場合は、いちおう傷薬だけで全部何とかなるかな? とは思います。消費期限めっちゃ短くなりそうだし、下手したら瓶の中で変質して効果変わりそうだけど。「冷暗所で保存してください」って書かれた陶器のビン……思ったよかアリ? 衝撃対策は必須ですね。
これら想定とは別に、そもそも前線に出るべきじゃない人は「パーティー」という組織形態には合いません。そういう人は拠点で働いてもらったり、彼ら自身の店舗を構えてもらったりするのが正解でしょう。パーティー追放で薬師なんかを聞かないのは、そこんとこさすがに無理がありすぎると分かるからでしょうね。医院追放はあったけど。
ゲームとして考えればあぶれ者は放置でいいんですが、実際に生活してる人間が失職したらどうなるか、その先を考えたのがたぶん追放系というジャンルだと思うんですよね。現役なのにキャリアを失うつらさは私にもよく分かります。じっさい二回も派遣切りされた身だし、完全にいらん子扱いでしたからね……どこ行っても使えねぇならニートやっててやるよ! というアカン方面への覚醒を果たしましたが、たぶんまた就活やる羽目になると思う。そしてまた解雇される、んだろうなぁ……
個人的に、追放系って「やることは決まっているが、それ以外やることがない」ジャンルだと思うんで、できれば書きたくない超難しいものなんですよね……。恨みを持つのはいいとして、その責任をどう取らせるか、最終的にどこへ渡すか、その後どんな人生を送りたいのか、このあたりがとても厄介です。私が書くとしたら「追放したやつはクズだが、より大きな力によって虚しい死を迎える/無差別に死を振りまく大きな力に立ち向かうため、主人公は立ち上がる」というストーリーにすると思います。
あと、ゲームバランス的に弱い人ならそもそも仲間に入れないし、「ここまで育てた人はいない」というならそれまでに死ぬ・引退する理由もあるべきですかね。『鬼滅の刃』でいう「黒い刀の剣士は出世しない」(危険視されてすぐ殺されるから)みたいなやつ。個人にせよ世界にせよ、今まで何やってた? ってのがある作品はめっちゃ萎えます。逆に度を越した無理難題をクリアして覚醒! ってのも「じゃあ他は何してんだよ」ってなりますけどね。なんか「666種類のものから命を吸い取ると、真の力が覚醒する!」とかって作品があった気がしますが、じゃあ剣士は何を切ればいいんだとか、薬師は何を作ればいいんだとか思うよね。難題をクリアしなくても及第点ならなおさら。
結論としては、「形ある貢献をしない人物はいなくていい」ってことでいいかな。現実にいる、成果に対して直接の貢献をしない人物というと、ハズレのコンサルタントとか、あとは太鼓持ち(遊郭なんかで、お客をいい気分にさせる褒めまくりマン)とかでしょうか。 後ろから口出ししてくるだけで手を動かさない同僚ってクソウザい、というか本気でいらないでしょ。すごく切り捨てられやすいっつーか、解雇されて当然の立場だと思います。バッファーがこれと同じだとは言いませんが、社員が実質的になんも仕事してないならそりゃ切られるだろって思いますね。
次に取り扱うべき話題を思いついたので、正当な追放の理由ってなんだろうと考え始めたけどぶった切って終わります。失礼する。
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